ターゲットはオカマに


2008.06.15
作:石山



 

ターゲットはオカマに

俺は狩谷・・・。まあ、こんな名前覚えなくてもいい。
俺は1ヶ月前に研究所から数々の発明品を持ち出した。発明品を使えば、俺の逃亡も楽だ。これを逃亡というべきだろうか。俺は逃げおおせたのだ。奴らに見つからない所で俺の楽しみのために俺は発明品を使う。

俺の楽しみ。それは、今から教えてやる。
ちょうど俺の目の前に女が眠っている。俺が部屋に入っても気づきやしない。のんきな女だ。眠っているせいで分かりにくいがこいつは、かなりの巨乳だ。佐倉巴、独身の26歳。身持ちが固いせいか、彼氏がいないらしい。こんなに美人なのにな。処女かどうかまでは、調べきれていない。まあ俺の場合、そんな事は気にしないがな。
付け加えると、一人暮らしで、ここ2年ほど実家にも戻っていないようだ。つまり、俺の好きなように出来るという事だ。

俺は彼女の眠りをさらに深くするために持っていた薬を嗅がせた。俺は30ほど数えた後に彼女の服を脱がせ始めた。
仰向けに眠る女の胸は巨乳ゆえに盛大にこぼれ落ちてくる。俺はたまらずそれを口に含んで一通り楽しむ。そうだ、やはり処女かどうかは試しておいた方がいいな。処女のまま、あんな状態になっては可哀相だ。ははは。

彼女は俺の目の前で眠りながらすべてを晒している。彼氏がいないせいか、あまり下の毛は整理されていなかった。俺は彼女の下の唇を丹念に揉みほぐし、それが湿り気を帯びるまで粘った。

「じゃあ、ちょっと確かめるぞ」

俺は自分のモノを出すと、彼女の中へと突っ込んだ。彼女は深く眠っているせいか、ほとんど反応を示さない。

「んー。いつもながら、処女かどうかってよく分からんな・・・」

俺はさっさと諦めると中に出してやった。今日は安全日だからな。出しても大丈夫だ。

「さて、そろそろ始めるか」

俺は彼女を人型の布に詰め込み始めた。意識の無い体は重いが、彼女は胸以外には余計な肉などほとんどついておらず、俺の手を煩わすほどではない。

しかし、何でこんな女があんな地味な会社で働いてるんだ。まったく。俺がもっといい職場を紹介してやるからな。きっと天職だと思うぜ。ふふ。

この人型の布はCP。中に入った者と同じ姿になる布である。現に、のっぺりとしたマネキンのような姿になっていた彼女は元の裸をさらしている。本来は、発明品を装着するための下地であり防具として使われるらしい。しかし、俺としてはこっちの方がお気に入りだ。俺は、皮のアタッチメントを鞄から取り出す。そして、その不思議な手触りの布をそっと彼女の胸に当てた。するとさっきまで手に収まりきらないほどあった乳房がその布に隠され、そして小さな乳首が残る。色気も何も無い。ご丁寧にちょろちょろっと毛まで生えている。そこで俺はいいことを思いつき、女に布団をかぶせた。

次の朝彼女が目を覚ました。寝ぼけ眼で俺と目が合ってしまいひどく驚いているが声がでない。俺が口をタオルで覆っているからな。

「やあ、巴くん。君にはこれから5つの指令を言い渡す」

彼女はタオルで覆われたまま、悲鳴を上げ続けている。手足を縛ってあるから逃げられないというのに。いや、そうじゃない。冷静になればほどけるように縛っておいた。だから、早く事を告げなければならない。俺はわざわざ着せておいた彼女のパジャマの胸をはだけた。するとそこにはシャツに入って見えなくなったという疑いの余地もない真っ平らな胸が現れる。俺はそれに合わせながら自分の体に付けたアタッチメントを見せた。

「君の立派な乳房はいただいた。代わりに俺の乳首をくれてやったわけだ」

俺の胸にはかなりのサイズのバストが見て取れる。デブがくっつけている胸とは訳が違う。瑞々しくて、柔らかそうな女の胸だ。

「それでこれを返してほしくば、俺の言う指令に従ってもらわねばならない」

彼女は俺の胸を見、幾分静かになっていた。

「まずは、今日会社に行って辞表を叩き付けてやるんだ。あのはげ頭の課長さんにな。いいか? もし、守らなかったらお前の乳房は永久に俺のものとなるんだからな」

そういって俺は彼女の持っていたバスト良く似たアタッチメントを揉み始めた。それは、男の俺にさえ淡い快感を伝えてくる。

「じゃあな」

そういって俺は部屋を堂々と出て行った。さあ、これからが楽しいのだ。

あたしが起きると、部屋に変な男がいた。

ストーカー!?

あたしは、ひどく驚いて声を出そうとしたけど口を塞がれて叫べない。手足も縛られている。男が何かを言ってくる。あたしの名前を呼んで指令がどうとか言ってくる。

男はあたしの胸の辺りを探るとパジャマのボタンを強引にはずしてしまう。

犯されるわ!

あたしは手をはずそうともがくが外れない。あれ、あたしの胸がない。胸には小さな乳首がちょこっと乗っているだけ。いつもなら肩がこったり、呼吸が苦しくなるくらいのおっぱいがあるはずなのに、そこは平らな素肌が見えるだけ。

「君の立派な乳房はいただいた。代わりに俺の乳首をくれてやったわけだ」

男はそういうと胸をはだけてくる。その胸にはあたしのと同じくらいのおっぱいがくっついてた。わけが分からない。交換なんてありえない。男は嬉しそうに話し続ける。なんなのコイツ。

「それでこれを返してほしくば、俺の言う指令に従ってもらわねばならない」

男はその後、あたしに辞職しろとか言って出て行った。あたしは、怖くて怖くて居なくなってからたっぷり5分間動けなかった。あたしは、胸をはだけたままベッドに縛り付けられていた。

その時、目覚まし時計が鳴り始めた。あたしは、なんとか手を自由にしようとして手を見上げると、紐がベッドの柱に絡まっているだけで結んでいるわけじゃないことに気づいた。あたしは、手を自由にした後、足を自由にした。

「なんなのよこれ・・・」

あたしは戸締りを確認した後、鏡の前に立った。そこには、小学生の頃以来見た事のないような平らな胸があたしにくっついていた。いえ、変だわ。あたしの胸が外れていたって言えばいいのかしら。

「どうして、こんな・・・」

あたしは何か貼ってあるのかとも思い胸をつねってみる。痛い・・・。赤くなる。

「ううっ、そうだ警察・・・」

そう言って電話を取ろうとした途端、電話が鳴る。あたしは反射的に取ってしまう。

「やあ、言っておくが。警察に知らせても無駄だ。お前の顔を挿げ替えてやることもできるんだ。どうだ? 見知らぬおっさんの顔にしてもらいたいか?」

さっきの男だった。なんであたしの行動が分かるの?

あたしは、周りを見回す。でも、誰も居ない。

「そんなことできるわけないわよっ」

「じゃあ、その胸はどう説明するんだい。ふふふ、まあ、さっさと会社に行くんだな。辞表を出すのに準備もいるだろう」

男はそういうと電話を切った。あたしは、泣きながら準備をした。パッドなんかないから、薄くなった胸にはタオルを詰め込んだ。急に軽くなった胸のせいでバランスがおかしい。いつもの服は着る事ができた。あいつは一体どこから見ているんだろう。

会社に着いたけど何も起きなかった。あいつが出てきたら課の人たちに言って何とかしてもらおうと考えると少しは気が楽になる。 うちの会社は制服とかがないからいい。あたしのサイズの服は特注しないと手に入らない。

「佐倉くん、これを頼む」

課長が課長の印が押してある書類を置いていく。あたしは、いつものようにその書類を処理する。

そして、その日は何事もなく過ぎようとしていた。お昼は食べる気にならないのでお昼も仕事をしていた。課の人たちは昼食を取りに外出したようだった。あたしはトイレへと立った。

考えるのを先延ばしにしておいたけど、あの男のこと、そしてあたしの胸 のことを考えなければならない。

あたしはトイレに入ると胸がずれていないかを確かめた。朝は気づかなかったけど、あたしの乳首からはちょろちょろっと毛が伸びている。色は黒に近い・・・。あたしは見なかった事にするか、真剣に考えるか、気が遠くなるような気がしながら個室の中で立ち尽くしていた。

その時携帯が鳴った。 非通知設定だった。

「 はい・・・」

男は小さな声でささやいてくる。

「辞表はどうした」

「そんなこといったって・・・。仕事やめたら困るじゃないの。それより警察に言うわよ、つかまりたくなかったら元に戻して」

あたしが、今朝から思っていたことをぶつけて見る。すると男の笑い声が響いてくる。

「それはすまなかったな。転職には足りないものがあったようだ。今から届けるよ。くくく」

男は電話を切る。 あたしは気色悪くなってトイレを飛び出した。 でも、扉を開いたところで急にめまいがした。

 あたしが目を覚ますとトイレ個室の中で座っているのが分かった。扉は閉まっていた。あたしはスカートをあげ、ショーツを下ろした状態で座っていた。

「あれ・・・」

 その時あたしの股間に見慣れないものが付いていた。あたしは、ぼーっとしているためか、悲鳴をあげずに済んだ。しかし、意識がはっきりするにしたがって股間についているものが見間違いや飾りじゃないことが分かった。どうしてわかったかっていうと、それを引っ張ると痛みがあったから、そして再びあいつから電話がかかってきたからだ。

「どうだい。お嬢さん、俺からのプレゼントは」
「何でこんなことをするのよ。一体何の恨みがあって」

 男は電話の向こうで笑い始める。

「恨みなんてとんでもない。あんたが気に入ったから、あんたに俺の息子をあげたんだよ。
 どうだい、付け心地は。俺はあんたのおマンコで楽しませてもらってるよ。あんたも楽しみたいなら会社からさっさと帰ることだな。あ、いや、会社を辞めることだな」

 あたしは胸と股間を入れ替えられてしまった。どうすればいいのか。

「言っただろう。俺の指令を守れば女に戻してやるよ。指令1は、はげ課長に辞表を叩きつける事だ。金の心配ならするな、ちゃんと考えてある」

 そういって一方的に電話が切られる。あたしは股間の変なものを見ないようにしてショーツをあげた。タイトなスカートは何とか股間のモノが目立つ事はない。でも、意識すると股間で大きさを変えているのが分かる。虫でもいれたような気分だった。

 あたしはその日、簡単なテンプレートを使い辞表を書き提出した。課長は引き止めてきたけど、有給を使うとなんとか月末まで2週間の休みになる。先輩もいるから、引き継ぐことは特になかった。

 

 帰りは電車が怖くてタクシーに乗って帰った。部屋に入った途端、携帯がなった。

「おかえり。ちゃんと指令が守れたようだな。はげ課長の顔が面白かったな、ははは」

 何がおかしいのよ、私の生活をめちゃめちゃにして。

「怒ったか? まあ、いいや。ベッドを見て見ろ」

 あたしはベッドに向かった。今朝、タオルや服を引っ張り出した跡が残っている。

「そこにパンフレットを置いておいた。後は、当面の生活資金だ。どうだ、やさしいだろ。おれって」

 ベッドの上には封筒が2つ置いてあった。大きな封筒には、風俗店のパンフレットらしきものが1枚。もう一つの小さな封筒には10万円が入っていた。

「とりあえず、派手な服でも買って、その店に就職活動だ。お前なら絶対気に入られるぞ」

 あたしの胸を取って、股間を男にした挙句、風俗店に勤めろって頭がおかしいんじゃないの?

「なんで、そんなところに勤めなくちゃいけないのよ」
「元に戻りたくないのか?」

 あたしはそれに対して返す言葉はなかった。しかし、こんな体じゃ風俗もできないはずだ。

「でも、それじゃあ、こんな体だと勤められないじゃないの。おっぱいもないのに」
「あん? ああ、パンフレットを見て見ろよ。お前に行って欲しいのはオカマバーだ。踊りありホール勤めもありの新進気鋭のオカマバーだ。稼ぎもいいはずだぞ。ふふ、お前の顔ならもてるだろうな」

 オカマバー・・・。

「そういうことだから、しっかり働いてくれよ。オカマの巴くん。くくく」

 嫌な笑いが聞こえる。あたしの中で何かが切れた。

「オカマじゃないわよっ。一体何なのよ、何でこんなことするのよ」

 涙が流れ出してきて、言葉にならなくなってくる。

「俺が楽しいからさ。お前が気に入らないのなら警察にでもいけばいい。現代医療じゃ、お前を元に戻す事も無理だし、俺が捕まることもありえない。指令を守れないというなら、俺は消えるだけだ」

 男はすごく冷たい声で言い放つ。

「お願いだから、元に戻して・・・」

 男は長く息を吐く。あたしはしゃくりあげるのが止まらない。

「じゃあ、指令を守る事だな。しっかり面接でかわいくするんだぞ。」
「オカマの振りなんてできない・・・」

 あたしがそう言うと、男が沈黙する。ごそごそと何かしている声が聞こえる。

「大丈夫だ。オカマの振りなんて簡単だ。そうだな、明日の朝になったら自信がつくだろう。もう1つプレゼントしてやるからよ。
 じゃあ、今晩はちゃんと眠れよ。明日の昼14時に面接の予約を入れておいたからな。名前と住所はそのままでいい。もって行くのは、お前の身だけだ」

 あたしは、そのままベッドにもぐりこんだ。ひどく気分が悪いし、ひどく疲れていた。


あたしは夜中に目を覚ました。全部が夢であって欲しいと思ったけど、あたしの胸にはタオルが入っており、股間には・・・。

「おしっこ・・・」

 あたしは股間がつっぱるのを感じた。そういえば、朝以来トイレに行ってなかった。あたしは、戸締まりを再度確認するとトイレに向かった。男がどこかからか見ているかもしれないと考えると不安だった。でも、尿意は限界近いようだった。
 スカートがちんちんに触れないようにゆっくりとおろしていく。スカートを降ろし終えると、ショーツから顔を出すグロテスクな物があった。それはあたしを見るような感じで勃っている。

「こんなもの・・・」

 あたしは便座に座ると、それをしっかり握って便器の中へと押し込んだ。体の芯が引っ張られていくような感じがした。

「あぅん」

 あたしはツンと鼻の奥が痛くなってくる。

「なんでなのよ・・・」

 あたしは、ちんちんをなるべく刺激しないように柔らかく握った状態で彫像のように固まった。急速に尿意が上昇してきて、あたしの中を突き抜けていった。

 シャー

 今までは無かった感覚。熱い液体が自分の中をたっぷりと流れていく感覚。ほんとにホースみたい・・・。

 それは、数分続いた。

 こんなに貯めても平気なんだ・・・。あ、終わる。

 尿の終息と共に、肌寒い感覚と震えが来る。あたしは、こころなしか縮んでしまって、さっきまでのようなグロテスクさを失ったちんちんをどうするか迷う。そして、いつものように拭く事にし、ティッシュをあてがった。ほとんど手間もない。

「そうだ、シャワーあびなくちゃっ」

 あたしは何か麻痺してしまったのかな・・・。こんな物を付けて、泣き叫ばないなんて。そうね、シャワー浴びてから考えよう・・・。

 あたしは服を脱ぐ。洗面台には化粧がとれかかって、髪の毛がくしゃくしゃになっているあたしがいる。顔は変わりない。肩も。でも、胸には重くて煩わしい時もあるけど、誇らしくもあったFカップの胸がない。胸からおなか、そして股間まで続くはずのなめらかな曲線は、途中にできている、黒くてぶよぶよした男性器によって止められている。
 その男性器は明らかに血が通っていて、あたしが見ている中でもわずかにうごめいている。そして、それにあたしの息がかかるのも分かる。

 あたしは、きゅっと持ち上がって形のいいお尻、そして、食事制限とエクササイズで保っているすらりと伸びた足へと指を這わせていく。これまでなくならないわよね。あたしは、不安を流そうとシャワーのコックをひねった。熱いお湯があたしの変わった体にあたってはじけていく。あたしは、結局ちんちんには触れずに汗だけを流した。

 あたしはシャワーを浴び終えると、サプリメントだけを飲んだ。あたしは、そこであることを思い出した。

「そうだ、加奈子に相談しよう」

大学時代の友達で仲の良かった加奈子は電車で2時間くらいの所に住んでいる。最近は忙しくて会えていないけど、彼女なら力になってくれるはず。よし、次の朝、夢から覚めていなかったら、加奈子に相談しよう。

 翌朝、いつものように目覚ましが鳴った。あたしは、手探りで目覚ましを探し当てて、頭をした。その次に携帯が鳴る。あたしは、反射的にそれに出る。会社からかな。

「おはよう、巴くん」

 あいつだった。あたしが自分で、自分が悪夢から抜け出しているかを確認する前にあいつが現実を叩き付けてきた。

「なによっ」

  声が枯れている。あたしは、せきを何度かして調子を整えて、再び話しかけた。

「いいかげん・・・に」

 声がおかしい、いえ、のどがおかしい。

「いい声だな。思った通りの声になったよ。どうだい、思春期の男の子程度の声だ。ちょっと裏声を出せば女に聞こえない事は無いが、まあ、聞こえないだろうな。ちゃんと練習しないと女に見てもらえないぞ。くくく」

 あたしは遠くなりそうな気をなんとかとどめ置きながら、自分ののどを触った。そこには今までなかったようなごつごつした突起がある。

「のど触ったか。のど仏っていうんだ。知ってるか?」

 それくらい知っている。でも、声を出すのが怖くて、出せなかった。

「この声なら、オカマの振りなんてせずともオカマと認識してもらえるだろう。まあ、しゃべらなければその容姿だ。ナンパくらいはされるだろうな」

 男の息が荒い。

「約束の時間には遅れるなよ。採用されたら次の指令を教えてやるから、楽しみにしてろよ。オカマの巴くん。ははは」
「だれがっ」

 あたしの低い怒鳴り声が届く前にあの男は電話を切った。
 あたしは、昨日の晩考えていた事を実行しようとした。そう、加奈子に助けを求めるのだ。加奈子ならば助けてくれる。あたしは、加奈子に電話をかけた。自分の声が変わっている事には気が回っていなかった。


 加奈子は早起きだから必ず出てくれるはず。あたしは加奈子の携帯電話にかける。しかし、加奈子の携帯電話は圏外になっていてつながらなかった。
 あたしは、祈りながらリダイヤルするまで一分の間をあける。すると、その間に電話がかかってきた。非通知に嫌な予感がしながら着信ボタンを押す。

「俺だ。悪い悪い、言い忘れていた」

 やはりあの男だった。

「友達に助けを求めるつもりらしいが、大事な友達もいっしょにオカマバーに勤めてもらう事になるぞ。ふふ。まあ、1人より2人のほうがいいか。それもいいな、くくく」

 そういうと一方的に電話を切ってしまった。

「なんでよっ」

 あたしは携帯電話をベッドに叩きつけ、自分の体もベッドに落とした。面接の時間まで、もう5時間ほどになっていた。移動に一時間ほどかかるから、準備まで4時間はある。でも、なんだか動く気力がなくなっていた。そのまま、何もかも忘れたいと思っていると意識が遠くなってきた。

 

 不意に意識が戻ってくる。

「あれ・・・」

 時計を見ると12時まであとわずかになっていた。あたしは慌てて服を探した。いつもの通勤の準備をしようとしてしまうけど、今日の準備は違った。

「オカマバーの面接なんてどうすればいいのよ」

 あたしは考えるのも馬鹿らしくなって、いつもの通勤と同じ飾り気がないスーツを着る事にする。昨日もそうだったけど、スーツを着る前に胸を詰めなくちゃいけない。おまけに、立ち上がっている股間のモノを収めるために、いつか買っておいた女性用のボクサーパンツを履くことにした。ショーツに比べて安定感があって、おちんちんが飛び出す危険はなさそうだった。

 しかたない。指令を全部こなして、早く元に戻してもらおう。あたしは、スーツを着て化粧を軽くすると封筒に入っていたパンフレットを頼りにオカマバーへ向かうことにした。

 そういえば、履歴書とかいるのかしら。身分証とかもいるのかしら・・・。部屋を出るときになって不安になってくる。

 不安になったせいか尿意を覚えてしまう。あたしは、トイレへと入る。そして、便器に座ろうとする前にあることを思い出す。たったままの方が早い。あたしはスカートをたくると腰にまとめ、ボクサーパンツからおちんちんを取り出した。

「あっ、そっちだめ」

 あたしは便座の裏に飛び散ってしまった尿を気にしながら、まだ流れ出す尿を便器の中へと注ぎ込んだ。 結構難しいのね・・・。あたしは、おちんちんを拭いた後、便器を拭いて急いで出かけた。


 あたしは、なかなか捕まらないタクシーをあきらめ、電車で向かう事にした。電車だとオカマバーのあるところまで乗り換えをいくつかしなければならない。あたしは、切符を買おうとして自動券売機に並んだけど、そこでおじさんにぶつかってしまう。

「すみません」

 当然謝ったんだけど、その声は低い声で・・・。

「あ、いえ」

 おじさんは訝しげにあたしの顔を見ると通り過ぎていった。あたしはしきりに咳をして、すでに見えなくなっているおじさんにアピールした。こんな思いはしたくない・・・。あたしは喋らないように道を進んだ。昼の時間帯だからラッシュほど人はいないけど、股間のモノがスカートを押し上げているようで気になって仕方がない。あたしは、座っても足を組む事もなく、ぎゅっと足を閉じて股間にはバッグを乗せておいた。

 オカマバーのある繁華街に着く。昼間なので客引きもいないが、怪しげな風体の男たちが行きかう女性に声を掛けている。ここは、ビジネス街にも隣接しているため、OLたちが抜け道に使っていることが多いのだ。

「おねえさん、おねえさん、仕事どう? かなり儲けがいいよ。ね、話だけでいいから」

 あまりに多い雑居ビルの中からオカマバーのビルを探そうと立ち止まっている巴に男が声をかけてくる。かなりの男前だが、ちゃらちゃらしていて巴は好きになりえない人だった。巴は声を出したくないために戸惑っている。口を塞いでいるため、息まで苦しくなってくる。

「ね、さ、詳しい話きいてみてよ、ぜったい気に入るから」

 男は巴の手を引いていこうとする。巴がその腕をひきもどそうとがんばるが、相手はかなり強引だ。思わず泣けてくる。

「そのへんにしとけよ。街の評判が悪くなる」

 そこには体育の教師のような35,6の男が立っていた。短い髪を後ろで束ねているようだが、巴の側からは見えない。
 

 

 若い男は先ほどのちゃらちゃらさせた雰囲気を一変させる。助け舟をだしてくれた男性へ向ける視線は射抜くようなものでとても恐ろしかった。あたしは、一触即発の雰囲気に思わず声を出してしまった。

「やめてくださいっ」

声を出してからしまったと思った。完全に男の声だったのだ。若い男はぎょっとするとあたしを見てくる。

「おまえ、オカマか。けっ、時間を無駄にしたぜ」

な、な、なんですって。
男はそう吐き捨てるように言うと、あたしをかばってくれた男性を一瞥して立ち去っていった。

「ふぅ。ぼーっとしてちゃダメだろ」

あたしは、こみ上げてくる怒りに思わず叫んでいた。

「オカマじゃないわよっ」

その怒鳴り声も低いものだった。ひどい声だった。あたしのことを、行き交うOLやサラリーマンがちらちらと見ていく。その視線に居心地が悪くなって、あたしは「ありがとうございました」と言うと、そそくさと立ち去った。もう面接の時間が近づいていたし、この声を聞かれてしまったんだもの。
さっきの男性が何か叫んでいるようだったけど、あたしはそのまま立ち去った。

早足で繁華街を歩いていくと、幸運な事に1度の往復の間に目的のオカマバーのあるビルを見つけることができた。オカマバーの入り口に着くと携帯が鳴った。非通知だった。

「よお、着いたようだな」

あたしが周りを見渡すけど、雑居ビルの薄暗いフロアがあるだけで誰もいない。

「指令だ。ちゃんと聞けよ。お前はオカマだ。オカマ」

むかっと来た。でも、怒りすぎて言葉が出てこない。それに指令をこなせば元に戻れるかもしれないと思うと逆らわない方がいいと思い出していた。

「ということだからな、絶対に店の者にばらすんじゃないぞ。あっそうだ。お前も働く目的が必要だろう。2ヶ月の間に店で500万稼げ。そうすれば元に戻してやる。おっと指令も残り1つになってしまったな。まぁ、パトロンでも見つけてがんばるんだな。プレゼントも計算に入れていいから。じゃあ、がんばれ」
「まちなさいよっ」

また一方的に電話を切られる。自分からオカマだって言わないといけない? オカマの振りって何よ、オカマの振りって。あと2ヶ月で500万ですって? そんなお金無理に決まってるじゃない。一体どうすればいいのよ・・・。

あたしは、めげそうになる心を抱えて、オカマバーの扉を開いた。中には表からは想像もできない広い空間があった。こぎれいな白に統一された座席とテーブル、それにステージがあった。照明は間接照明だけど、思っていた以上に明るくおしゃれなカフェのようでもあった。

「どなたー? まだ開店時間じゃないのー」

奥から野太い声が聞こえてくると共に、人懐っこそうな笑顔が見えた。

「あら、さっきの」

奥から顔を出したのは、先ほど助けてくれた男の人だった。でも何か違う。化粧をしている。

「あらあら、もしかして、面接に来た佐倉巴さん?」

先ほど遭ったときとは異なるオネエ口調でそう聞いてくる。もしかして、この人オカマ?

「はい・・・」

あたしは返事をすると中へと一歩踏み出した。

「ちょっとまっててね。服着ちゃうから。ごめんなさいね。そこで待っててねん」

あたしは一番近い席に座って待つ事にした。さっき見たときは、青年団とかに入ってそうな人だと思ったのに、人ってば見かけによらないわね・・・。

「はいはい、ごめんなさいねー」

キラキラとした胸の開いたドレスを着てさきほどの男の人が出てきた。お化粧にアクセサリーと、かなりケバい。あたしは、思わず立ち上がった。

「さてと」

あたしが挨拶をしようとあたふたしいていると、赤い付け爪がのっている大きな手であたしの手をつかんできた。思わず腰が引けてしまう。うるんだ瞳で見られて、気色悪かった。会社の忘年会で高村さんがやった女装と同じで、似合ってない。

「採用」

その人はそう言って微笑んだ。


まともに話などしていないのに、採用なの? 採用されたくない・・・。

「そんなにびっくりしちゃって。あたしはママの赤崎まどかよ」
「あの、どうして・・・」

 自分はオカマじゃないのに、どうしてそんなに簡単に採用するのよ。

「もちろん、あなたが女だからよ」

 この人はちゃんと分かってくれてる。

「女なのがよく分かるわ。着こなしも自然だもの。苦労したのね」

 苦労はした。でも、なんだか違和感もある。もしかして、あいつの事を知っているのかと思ったから、あたしが聞こうとすると、手を私の前に差し出す。

「いいの。何も言わないで。私もがんばってるのよ。こんなにゴツイ割に体が弱いせいで女性ホルモンとか使えなくって。でも、大丈夫よ。心はあなたとおなじ女だから。さあ、お仕事の説明するわね」

 ハンカチを取り出して目に涙をためているまどかさんは、数枚の紙を取り出した。

「あなたの事情は聞いたりしないわ。ここに来た人たちは女になりたくってお金が必要だったり、女になるための借金を返したりする者たちばかりなのよ。そして、踊ってお客さんを楽しませて、お金を貰うの」

 あたしは説明を受けた後、契約書を取り交わした。お給料制だったけど、思った以上にお給料が悪かった。これじゃあ、500万円には及ばない。あたしがパトロンのことを聞くと、何人もの従業員たちを女にしてくれた資産家のお客がいるらしい。

「今日からお店に出られる? 大丈夫よ。見習いでもお給料が出るから。あなたならきっとナンバーワンになるわよ」

 褒められて悪い気はしないけど、でもオカマの中でナンバーワンになるなんて・・・。あたしは、奥の部屋に通された。中は楽屋のようになっていて、鏡が並んでいた。

「サンバの衣装もあるし、日本舞踊の着物なんかもあるわよ。そうそう月に一度、姉妹店で踊る事もあるわよ」

 3時過ぎになって数人の人が入ってきた。

「おはよーございます。ママー」

 鼻にかかるような裏声が挨拶をしてくる。

「お店の子達に紹介するわね。ほら、立って」

 あたしは言われるままに入ってきたオカマの人たちに挨拶を始めた。

「はじめまして。アキでーす。あっら、綺麗な子」
「よろしくー。マイよ。ここじゃ一番の古株」

 アキもマイも線が細く巴の持っていたオカマという雰囲気はなかった。声も高く、少し違和感を感じるくらいだ。

「あなた、玉は抜いてるの? あたしはもうすぐ抜くのよ」
「えっ」

 言われている事がよく分からない。抜くって何を。

「だって、かなり若くから抜いてないとそんな体型無理でしょ」

 あたしはよくわからなくって、体質でと言っておいた。アキさんは納得してないようだけど、

「ほーら、詮索はしないの。巴ちゃん、うちはオカマバーだけど、ニューハーフもOKなのよ」

 オカマとニューハーフの違いも分からない。何が違うのかな・・・。あたしは続々とくるオカマさん達に挨拶を繰り返した。そして、開店時間になると見習いとしてホールに出る事になった。

「巴ちゃん、名前どうする?」

 ママがそういってくる。

「だって、本名じゃ都合が悪いでしょ? そうね・・・メイでどう? あなたは、とってもかわいいから」

 こうしてあたしは、メイになった。

 あたしは、固くなって店の隅でお客さんを眺めていた。

「こんばんはー。高峰の社長さん」

 アキさんが常連客っぽいおじさんに挨拶をしている。高峰の社長と呼ばれたその人は、アキさんににこりとしておもむろにアキさんの胸を掴んだ。

「いい胸だ」
「もう、社長さんたら」

 アキさんは高峰社長が揉むのを柔らかく離すと、お酌を始めた。高峰社長は鼻の下を伸ばしながら、アキさんのぎりぎりまで露出した太股をなでている。男なのに男を・・・。あたしは変な世界に踏み込んでしまったのかしら。

「アキちゃんの胸ね。社長さんが入れてくれたのよ」

 ママが通りがかりにあたしに耳打ちをしてくる。胸を入れたって、アキさんは豊胸手術したのね。あたしは、途端に自分の平らな胸を思い出して情けなくなる。本当なら重くて肩も凝るくらい立派な胸なのに・・・。

 遠い席でマイさんがあたしのほうを指差しながら話しているのが見えた。あたしは、いよいよなのかと思って緊張のあまり息が詰まった。そして、とうとうマイさんがあたしに向かって手招きをしてきた。マイさんは、会社員風の若い男の人を接客していた。

「小林さん、この娘が新人のメイちゃん。どうぞかわいがってあげてね」

 小林さんというのね。あたしは、近くで見るとかなりの男前だってことに気づいた。本当、タイプかもしれない。

「すっごい美人だな。ええ、本物? いや、この場合は違う意味で、えっと・・・」

 女に見られたんだ。あたし。

「美人でしょう? あたしには負けるけどね」

 マイさんが胸をそらせる。小林さんは、ハハハと笑いあたしに隣に来るように指し示す。

「僕は、小林啓二。メイちゃんは、この道ながいの?」
「やだ、いきなり口説くの? 私のこと口説いてくれないくせに」

 小林さんはマイさんにごめんごめんと手を合わせながら、あたしの方に再び向き直す。

「かなり薬やったんじゃないの? 若い頃からやらないとそこまで体つくれないでしょ」

 小林さんのいう薬というのがよく分からなかったので、あいまいに笑っておいた。

「あの、お酒お注ぎします・・・」

 あたしは、声が高くなるようにして言ってみた。でも、上ずって変な声になってしまう。

「あはは、そんな緊張しないでいいよ。それに俺って金ないから、ここ着てもキープしてるボトルをちびちびやるくらいなんだ」

 小林さんはぽりぽりと頭を掻いた。照れたような顔も素敵だった。

「でも、こんな二枚目がお店に来てくれるだけで眼福よねー。一度でいいからお相手したいわ」

 小林さんはまんざらでもないような顔をするけど、こんなに男前なのにもったいないというか・・・。なぜ?

「メイちゃんは、これだけ美人なら彼氏もいるだろう?」

 あたしは素直にいませんと言った。

「そっかー、僕が立候補しちゃおうかな・・・」

 え。あたしは、小林さんの顔を見る。真剣な表情?

「も~。メイちゃんが困るからそういうのやめたげてね。小林さんったら、新人の娘に必ず言うのよ、そのセリフ」

 マイさんはあきれたという感じで首を振りつつ教えてくれた。でも、さっきの表情はどきどきしてきちゃった・・・。う、何、変なところが反応してる。
 あたしは、スカートにぶつかって痛みを伝えてくる股間のモノの上に軽く手を添えて誤魔化した。

「メイちゃん、こっちいらっしゃーい」

 ママがあたしを呼んだ。あたしは小林さんに挨拶をすませると、ママの座る席へと向かった。そこには、先ほどの高峰社長がいた。

「おお、きたきた。ここに座りなさい」

 マイさんと反対側を指し示す高峰社長。

「メイちゃん、ご挨拶して」

 マイさんにうながされてあたしは名前を名乗った。メイという名前、自分じゃないオカマという存在が何か変な気持ちを起こしてくる。これは、楽しいって気持ちかもしれない。あたしは、微笑んだ。

「おお、ほんと別嬪さんだね」

 高峰社長はあたしの顔を真正面から見えるように体を起こす。鼻を伸ばしていない真顔の高峰社長は40代の男の魅力を放っていた。うちの部長とは大違いだった。でも、おもむろに差し出した手が別の生き物みたいに蠢いていた。

「さーて、きみの胸はどうかな」

 あたしは硬直した。あたしの胸にあと一歩というところまですーっと手が伸びてきた。でも、あたしの胸に触れるか触れないかというところで、マイさんがその腕をさらって自分の胸に付けた。

「社長さんはこっちを触ってればいいのよー。メイちゃんは、まだ今日始めたばかりなんだからびっくりさせちゃだめよー」

 高峰社長はしゅんとしたようで、マイさんのおっぱいをひとしきり揉んでいた。

「いや、やっぱり」

 そこからの高梨社長の動作が速かった。あたしの胸の上に両手が乗っかっていた。

「んん?」

 あたしにはブラが引っ張られる感触と胸に入れたタオルがわずかに胸でずれる感覚だけ・・・。高梨社長は、あたしの胸から手を離すと腕を組んだ。

「どうしたの。社長さん」

 マイさんが考え込んでいる高梨社長の肩をちょこんと掴んで訊いている。

「あっ。メイちゃんにも入れてあげようとか考えてるんでしょう?」
「え?」

 あたしは思わず声を上げてしまった。

「豊胸手術よ、豊胸」

 マイさんが当然だというふうに話しかけてくる。高梨社長があたしの方をちらりと見てくる。そして、テーブルを見つめていった。

「まあ、条件によるかな。君はかなり若くからホルモンをやっているようだね。本当に女になりたいなら私を頼ってくれ。その気があるなら、その時条件を言おう」

 そこまで言ってにやりとした高梨社長さんは、マイさんにお酒のおかわりを頼んだ。あたしは、再び胸を膨らませることについて何か惹かれるものを感じながら考える事ができず、お酌をして他愛もない話をしていた。
 
 高梨社長は二時間ほどいて帰ってしまい、あたしは他のお客さんを相手することになった。女性と一緒にくるサラリーマン風の人たちがいた。どうやら同僚らしく、珍しいもの見たさに来たらしい。

「へー、君ほんとに男なの?」

 あたしが挨拶をすると、営業マンが似合いそうな押しの強い感じの男の人が、あたしの頭からつま先までを眺めてくる。そして、急にあたしの股間を掴んできた。タイトなスカートを穿いていたから掴めはしなかったけど、ぎゅっとその人の手がアレに押し付けられるのが分かる。

「キャー」

 あたしは、割と高い声で叫んでしまった。でも、なんだかロバが鳴いたようなひどい悲鳴だった。

「ちょっとちょっと、冗談じゃん。何本気にしてるんだよ。俺はまっとうだよ」

 悲鳴に慌てたのか、その人が急に悪態をつき始めた。そして、一緒にいた女の人たちが、

「吉岡さん、へんたーい、ふふふ」
「吉岡さん、セクハラですよ、それー」

 注目を集めてしまったので、あたしは立って周りにお辞儀をした。いっしょについててくれたママさんがお詫びを言っている。

「ごめんなさいね。この子、今日が初めてなので。まだ、うぶなんですよ」
「オカマがうぶってか、ははは」

 ママの表情は、そんな吉岡の言葉にも変わらない。にこやかなまま、お酌をしていた。あたしは、ママの指示で奥で休憩をとることになった。

 あたしが休憩をとっているとあたしと歳が近いと紹介されたアキナさんも休憩にやってきた。

「メイちゃん。どう? なれた?って一日じゃ無理よね」

 かなり低い声を無理に高くしているようで、完全にオカマさんの声という感じだった。アキナさんの顔をかなり彫が深くて、男顔だった。

「メイちゃんは、こういう仕事は初めて?」

 あたしは、はじめてだと告げた。すこしお酒が入ってるためか、それとも元々話好きなのかアキナさんは自分の事を話し始めた。

「そうなんだ。でも、あなたならキャバ嬢でもできるわよ。あたしは、ほらこんな顔だしね。あたしは、つい最近まで会社員だったのよ。でも、なじめなかったわ。今はお給料も多いわけじゃないけど、まあまあいい生活してるわ。あなたは?」

 ええと、どうしよう。

「OL」

 聞こえないと思って小さな声で言った。でも、アキナさんは聞こえていたみたいで・・・。

「OL!? すごいわメイちゃん」
「どしたの、どしたの?」

 ママさんが戻ってくる。

「メイちゃんってOLやってたそうなのよ、ママ」
「まぁ、詮索はやめときなさいよー。でも、OLって本当? すごいわね。メイちゃんならバレずに働けそうよね」
「でしょでしょ?」

 アキナさんとママさんが盛り上がっている。

「なら、接待だと思ってれば慣れてくるわよ。それにもう少し笑ったほうがいいわね。せっかくのかわいい顔がこわばってるわよ」

 ママさんがアドバイスしてくる。

「かわいい女になるのって大変なんだから」

 アキナさんが遠い目をしながら言う。でも、あたしは違うのよ、あなた達とは。全然違うの。

「アキナちゃんも努力してるものね。あ、そろそろダンスの時間よ、準備して」

 ここには、ショーが1日に1回あるそうで日替わりで演目が変わるみたい。あたしは、舞台裏で着替えをしている人たちを眺めながら朦朧としてきてた。

 女のように化粧をし女のように振舞う彼女たち、いえ彼たちは、服の下に男のモノを隠していた。完全に作り物とわかる胸をしたり、何もない女のような股間をしている人もいる。でも、なんだか女とは違う。あたしは、今あの仲間になってるんだ・・・。あたしは、思わずトイレに駆け込んでしまった。

 トイレの外では音楽がかかり、胸を強調し肌を露出した服に身を包んだオカマさんたちが踊っているんだろう。

「あたしは、違うの・・・」

 トイレに来てしまうとお酒を飲んだせいで催してしまった尿意が自分が女じゃないことを知らしめてきた。目の前には、少し酔ったあたしが鏡に映っている。

 あたしが個室へ入ろうとするとお客さんの女性が入ってきた。あたしは少し驚いたけど、そのまま個室へと入ろうとする。すると、そのお客さんがあたしの体の前に割ってはいってきた。

「男は男用にいきなさいよ」

 あたしは呆然として、彼女が鍵を閉めるまで立っていた。あたしは、尿意をこらえながら逃げるように外に出た。男用トイレのドアには、従業員も使いますと書いた札がかかっていた。あたしは、入れなかった。でも、尿意も待ってくれない。あたしは、男用のトイレに入り込んだ。見慣れない便器があり、その奥に個室がある。あたしは、そちらに入った。
 そして、用を足した。あたしは、見ないようにして便器の外へ飛び出そうとしてしまうさきっぽを何とか中に向けた。体をひねって水を流す。それを合図に管の中を尿が通っていった。

 あたしは安心すると共に、男用トイレで堂々とおしっこをしている自分がおかしくて、はずかしくてたまらなかった。さっきの女性は、あたしを男と呼んだ。それもこれも、あの男のせい。あたしの胸を取って、こんなものを付けた憎い奴。あたしは、おしっこを出し切ってしまった。拭かなければならないのが、ソーセージのようなモノの先。クリちゃんなんかとは大きさも形も違う。
 
「メイちゃん、大丈夫?」

 その時、トイレの中にママの声が響いた。どうやら、トイレに長居をしてしまったあたしを心配してくれたらしい。あたしは、スカートを直すと、外に出た。ママに大丈夫と告げた。その日は、もう帰ってもいいということだった。そんなに顔色悪かったのかしら・・・。でも、なんだか安心した。

「ちゃんと帰れる?」
「はい・・・。大丈夫です」
「んー、心配だわ。タマちゃん、タマちゃん」

 ママは、まるっこい感じのオカマさんを呼んだ。腕白な男の子にウィッグをかぶせたような人だった。

「メイちゃんを送っていってくれる?」
「いえ、そんな悪いです」

 あたしが断ると、ママは首を横に振る。

「あなたみたいなかわいい子が1人歩いてたら変な男がついてくるわよ。最寄り駅までだけでもタマちゃんといっしょにいきなって」

 あたしは、ママとタマさんにお礼を言うとタマさんと一緒に出て行った。タマさんも今日はちょうど早く帰る用事があったそうなのだ。タマさんは、感じのいい人であたしと同い年だった。とても若く見える。あたしがそう伝えると、

「ありがとねー。これでもお肌には気をつけてるわけよ。美顔器とかちゃーんとね」

 あたしが笑うとタマさんも笑った。

「よかったわー。メイちゃん、なんだか沈んでたもの。でも、美人なんだから笑わないと損よ。ね、そう、その顔だー」

 タマさんは、自分の口を指でにーっと広げて笑う。思わず噴出しちゃった。あたしは、さっきのトイレのことを話した。なんだか、聞いてもらいたかった。

「まーね。心は女でも、体は男だから・・・。でも、くじけちゃだめよ。あたしたちは、女よりももっとピュアな乙女心を持っているのよ。ちょっと筋肉つきやすいけどね」

 そういってまた2人で笑った。タマさんは少しトーンを落として聞いてきた。

「メイちゃんは、性転換手術するために?」

 あたしは、答えられなくてうつむいてしまった。あの男はあたしはオカマであることを通さなければならないと言った。

「あたしね、あともう少しで手術するの。このへちゃむくれな顔もいじるから、今までかなり貯めたのよ。メイちゃんは、顔はいじらなくてもよさそうね・・・」

 本当にうらやましそうに言ってくる。何を言えばいいのか全く分からない。あたしは、元々女だし・・・。

「メイちゃんも、とりあえず、がんばりましょうね、あはは」

 あたしは少し元気になったかもしれない。オカマさんたち、彼女たちは、決して気持ち悪くはない。そう思えた時、酔っ払いの集団があたしたちの前にいた。

 酔っ払いたちを避けてタマさんと端に寄る。

 すれ違おうとした時、タマさんはあっと声をあげた。あたしは羽交い締めにされていた。酒臭いにおいがあたしの首筋に掛けられる。

「おねーちゃん、オカマなんかと遊んでないで俺たちとあそばね?」

 ろれつがまわっておらず、かなり酔っていることが分かる。あたしは、背後から抱きすくめられて身がすくんで動けない。周りの酔っ払いもニヤニヤしているだけだった。

「メイちゃんをはなしなさいよ」

 タマさんの抗議も通じない。

「そんなにオカマが好きならあたしを触りな」

 そういってタマさんは男たちを追い払おうとする。あたしはなんだか勇気付けられて酔っ払いを振りほどこうとする。

「そんなにあばれんなって」

 酔っ払いはあたしの体を触りはじめる。タマさんは他の男たちに阻まれからかわれている。背後の男があたしの胸を掴んだ。男の手が止まる。そして、次の瞬間、あたしのスカートの前に手を当てていた。そして、あたしの中に生えているモノに突き当たる。

「こ、こいつもオカマかよ!」

 そう言った途端、あたしは突き飛ばされていた。周りの男たちは、あたしに抱きついた男を口々に馬鹿にし始める。

「お前、掘って貰えって。美人じゃないか、な、はは」
「実はその気があったんじゃないか?」

 そういわれた酔っ払いは言い返す。

「馬鹿言うなよ! 俺は女が好きなんだ。こんなオカマがすきなわけねーだろ」

 あたしは、その瞬間男を思いっきり突き飛ばしていた。あたしはふらふらとよろけて植え込みに仰向けにひっくり返った酔っ払いを尻目に駆け出した。タマさんがあたしの後を追いかけてくる。酔っ払いたちは、転がった男を笑っている。

 角をいくつか曲がったところで、あたしは立ち止まった。

「まってー」

 追いついてきたタマさんがあたしの肩に手をかけた。

「はーはーはー。メイちゃん、走るの早いわね」

 あたしは、止められない涙をタマさんに見せまいとした。けど・・・。

「メイちゃん。大丈夫、大丈夫。大丈夫だからね」

 今まで付き合うこともなかったオカマさんたち。そんな人たちは、思った以上に温かかった。タマさんが、あたしに渡してくれた手作りのネコのアップリケがついたハンカチを見ると余計に涙が出てきた。そのまま、あたしはタマさんの前でハンカチをぐしゅぐしゅにするまで泣いていた。

 
 それから数日は何事もなく過ぎた。あたしは、体の変化に耐えられないかと思ったけど、ママを初めとしてオカマさんたちとの付き合いは思った以上に悪くはなかった。でも、お風呂では目を伏せてなるべく見ないようにしたし、トイレも決して男用の便器なんて使わなかった。そう、あのときまでは・・・。

「ねーね。メイちゃん」

 アキさんが、氷を用意していたあたしに話しかけてくる。

「2番席のお客さん、今日はじめてなんだけど、すっごい羽振りがいいわよ」

 アキさんが言おうとしていたことは、なんか分かった。あたしが、かなりのお金を必要としている事をぽろっともらしてしまったから・・・。

 あたしは、指令で500万円を稼がなくてはならない。でも、ここで普通に働いて2ヶ月では40万円もぎりぎりといったところなのだ。そう、あたしにはパトロンについてもらうしかない。あたしは、なりふりかまわずにやるしかないのだ。あたしは、アキさんに従って、2番席へと向かった。そこには、恰幅のいいおじさんがいた。脂ぎった顔、はげた頭は、あたしの嫌悪を刺激してきたけど、親しみやすそうな雰囲気はあった。

「メイちゃんです」

「お? こりゃ、えらい別嬪さんやのー」

 関西弁のこの人は、金山さんと言った。あたしは、微笑んで挨拶をした。

 金山さんは、何でも関東への出店のために長期滞在をしているそうだ。

「メイちゃん、ほんまにおちんちんついとるんか?」

 あからさまな質問をされてあたしは面食らってしまった。金山さんは、あたしのヒザに手をついてくる。

「どうや。ここでちょーっと見せてくれへんか?」
「え、そんな」

 あたしは、これまでの数日、オカマとしての日々を感じさせることはなかった。踊りもまだ参加していないし、それに1人のときはなるべく見ないようにしているし・・・。

「まあ、ただとは言わへん。ほら、どや」

 金山さんは、内ポケットから分厚い財布を取り出してきた。そこからは、あたしが見た事もないような紙束が見えていた。

「ほれっ。どないや」
「社長さん、あたしのならいくらでも見せてあげるわよ」

 アキさんが立ち上がるとスカートをめくろうとする。

「そうかそうか、ほれいっちょみせてもらおっか」

 アキさんは、そのまま黒のレースのパンティに包まれていたモノを出してくる。あたしは、目をそらす。

「ほう、包茎やのー。かわいいもんや」

 金山さんは、ぴんとアキさんのおちんちんをはじくとアキさんのパンティに決して薄くない数枚のお札をねじ込んだ。お金・・・。

「メイちゃんは、恥ずかしがりややのう。ほれ、こんだけやるけど、どうや?」

 あたしは、500万円稼がなくてはならない・・・。でも、こんな人前で、恥ずかしい。あんなモノを人に見せるなんて。

「そうか・・・。いややったらええんや」
「えっ」

 金山さんがお札をしまおうとしているのを見て思わず声を出してしまった。

「そーかそーか、ええこやの。ほな、みせてもらおーか」

 金山さんは期待の眼差しであたしの股間を眺めている。あたしは、アキさんを見る。アキさんは、にこにことして頷いている。あたしは、あたしは・・・。

「ちょっとだけですよ」

 人前で、オカマの証拠を晒してしまいました。

「ほっほー。こりゃ、でかい。デカマラやのー」

 金山さんがひときわ大きな声をあげる。からかうのではなく、誉めそやすような感じだった。あたしは、すぐに隠した。

「いやぁ、ほんまにオカマちゃんやったんやのお。悪い悪い。おいちゃんの心や。とっとき」

 あたしのパンティには、アキさんの数倍は厚い札束がねじ込まれてきた。あたしは、頭の中が痺れた。何かが壊れたかのように・・・。

「あの・・・おトイレいってきます」

 あたしがトイレに立とうとすると金山さんが言った。

「わしもいこか。連れションや」

 金山さんは、ひどく嬉しそうだ。あたしは、目の前が暗くなったが、すばやく個室にもぐりこめればと考えていた。さすがに個室までは入ってこないよね・・・。


 しかし、それは甘かった。あたしは、またしてもお金の魅力に負けてしまったのだった。金山さんの目の前で、目の前で小便器に向かってたっていた。

「ほれっ、いっつもしよるように出したらええねん」

 札束を持った金山さんがあたしの股間を覗き込んでいる。あたしは、金山さんに言われるとおり足を開いて両手でアレを掴んでたっていた。スカートは腰までめくっており、おしりは完全に見えている。

「なかなか出てけーへんな。もしかして、見られて感じよったんか」

 あたしのアレは痛いほど立ち上がっていて、おしっこが出るような感じがしない。痛い・・・。

「しゃーないなぁ。じゃあ、違うもんの方がええな」

 そういうと金山さんはあたしの背後にぴったりと張り付いてきた。お尻に堅いものがくっつく。

「やめてー」

 あたしは、そう叫んだ。でも、いまはちょうど踊りの始まった時間で、外には聞こえない。

「おいちゃんが出したるさかい、じっとしとり」

 もがくあたしをがっちりと押さえ込んだ金山さんは、あたしのおちんちんを掴んだ。自分でもお風呂ではお湯をかけてそれっきりなのに、初対面のこんなおじさんに触られている・・・。

「こりゃ、垢がいっぱいたまっとるなー。まあ、ええわ。いっしょに扱き落としちゃろ」

 金山さんがあたしのモノをさわさわと触る。あたしは腰が砕けそうになって金山さんにお尻を押し付ける形になる。

「柔らかいおケツや」

 金山さんの荒い幾使いがあたしの首筋にかかる。そして、次第に金山さんの指が手が振動する。あたしのモノが金山さんの手の中でビクビクと動き始める。

「おお、もうでよるな」

 金山さんが言ったとき、あたしの頭を突き破るような快感があたしを襲った。あたしは、金山さんが嬉しそうに笑う声を聞きながら、あたしのおちんちんから噴出するのを感じていた。とても、気持ちよかった・・・。

 

 あたしは、金山さんに体を預けて快感に浸った。あたしのモノを金山さんがぎゅっと牛の乳を絞るように扱いていく。その手があたしの先っぽに触れたかと思うと、離れていった。そして、あたしの目の前に黄色がかった白い粘液が差し出される。

「ほれ、こんなん出よったわ。メイちゃん、オナ禁中か? そんなん体に毒やで、ほれ、まだ若いからまだ行けるやろ」

背後の金山さんは、そのぬめった手でまたあたしのモノを握るとこすり始めた。金山さんも感じているようで、あたしのお尻に固い物があたっていた。あたしは、体に力が入らなかった。でも、その快感は忘れられなかった。そう、とてもとっても・・・気持ちいい。

「メイちゃんは、こここんなにしよるけど、他は女の子やのー。やわこい尻してからに」

ぐいぐいと押し付けられた物があたしのお尻の割れ目にあたる。でも、あたしは自分のおちんちんから来る快感に酔いしれてそれどころじゃなかった。

「おっぱいなんてすぐ付けられるしのー。おっ、また出よる」

あたしの低い声が、快感に負けて漏れ出た。トイレに臭う男の匂い。それは、昔の彼氏の出した物と同じ匂いがした・・・。それから、すぐに開放されたあたしは、金山さんと一緒に席に戻った。踊りは佳境になっており、客席は盛り上がっている。店長が色っぽい姿で足を振り上げている。でも、なんだか空手でもしてるみたいに見えるのがおかしい。

席に戻ったあたしに金山さんはささやいてきた。あたしは、答える事ができなかった。でも、もらったお札があたしにこのまま突き進めと言っているような気がした。金山さんは、電話番号を置いて店を後にしていった。

「メイちゃん、金山さんになんて言われたの? なんかショック受けたみたいだったけど」

アキさんが興味津々といった感じで聞いてくる。当然だとおもう。あれほど気前のいい人は、なかなかいないもの。

「それが・・・」
「もしかして、パトロン?」

やはり、あれはパトロンの申し出だったんだ・・・。ママにも言われたように、お金を稼ぐためにはパトロンに付いてもらう必要がある。だけど、パトロンという言葉はでなかった。あたしは、言われた言葉を思い返していた。

『おいちゃんの情婦にならんか?』

あたしは、もらった電話番号を魅力的に思えた。でも、まって。倍以上も年上で、さらにオカマを情婦にしようとするおじさん・・・。あたしは、自分の感覚がこの事態を変だと認識するように努力した。でも、今日もらった30万円の事を考えると、とても魅力的なおじさんに思えてしまうのだ。

「アキさん、情婦って何をしたらいいんでしょうか」

アキさんは、飲んでいたアイスティーでむせた。やっぱり驚くわよね。あたしは、アキさんが落ち着くのをじっと待つしか無かった。

 

 それから数日後、あたしは金山さんのマンションにやってきた。家具は揃っているけど、あまり生活観がない。金山さんがちょっと出かけるといって出てから3時間がたったとき、誰かが入ってくる。派手な衣装を着た女性だった。

「あなたね、パパが買ったって言う野良猫は。そう、ふーん」

 その人は、あたしの体を観察するとぎゅっと胸をつかんできた。でも、あたしの体にはつかまれるものがもうなかった。

「やめてください!」

 あたしは、身を振りほどく。

「え? もしかして、パット? 何よ、パパが気に入ったのが偽乳女!? でも、ちょっと待ってよ。今の声、もしかして、あんた男?」

 その人は、あたしの股の間に足を挟んできた。

「そう、綺麗な顔してるから分からなかったけど、ちゃんとあるじゃない。そう、パパってそういう趣味もあるのね。そっか・・・」

 そう言うとその人は勢いに押されて声が出せないあたしの前で脱ぎ始めた。ノーブラだったようで、服を脱ぐとほぼ裸だった。

「パパのお金が目当てなんでしょうけどね。あんたの代わりはわたしに出来ないわ。だから、そうね。あんたのチンコがどのくらい起つのか知らないけど、わたしを楽しませてくれたら、許してあげる」

 そう言った彼女は髪留めをはずして髪を垂らした。すでに下も脱いでしまっている。よく手入れされたそこがあたしの目の前に曝け出される。

「こんなとこ、パパが帰ってきたらどう思うかしらね。ふふ、もうあなたなんていらないって言うんじゃないかしら」

 そんなことを言った彼女はあたしの服に手を掛けた。あたしは金山さんが着るようにと言っていた服を抑えて抵抗した。

「大丈夫よ。わたしを逝かしたら帰ってもいいから。それとも、オカマしすぎてあっちのほうは忘れた? 女じゃ萎えるとかだったら、あたしが犯してやるから」

 そう言った彼女は尋常じゃない雰囲気だった。あたしの頭の中で打算が判断しようとしていた。お金と元の体。これは金山さんに掛けることにしたのだ。それに仕事に行くまでの数時間さえ耐えればなんとかなる。

「わかった・・・」

 あたしは彼女の唇を思い切って吸ってみた。すると体のほうが反応するようだった。急に元気になった股間が入れてくれと頼んでくるようだった。まだ入れたことのないこの体が、女の体を切望している。

「あら、立派に起つじゃない。でも、いきなりなんてダメよ。さあ、舐めなさい」

 そう言うと彼女はあたしの前に仁王立ちで待ち構える。あたしは、ひざまずいて彼女の股間に顔を近づける。本当ならそんなところに顔を持っていくなんて考えられない。彼女のにおいが迫ってくる。とても女くさい。私の体からも出ていたものだ。いまは、なんともそそられる。あたしは、ためらいがちに舌を割れ目に這わせた。

「そんなんじゃ、入れさせてあげないわよ」

 あたしは、その言葉にあせった。そして、早く濡れさせようと努力する気持ちがわいてくる。本当に不思議だった。こんなに男としての気持ちが出てくるとは思わなかった。金山さんに逝かされた時から何度かオナニーをしているのだから、男に近づいたのかもしれない。

「はぁん、そ、そこ、分かってるじゃない。女はじめてじゃないわね」

 初めてに決まっているけど、あたしは女だったんだ。

「オカマもいいかも、あんたなら付き合ってあげてもいいわよ」

 そう言うと、彼女はベッドへと歩き出した。あたしは頭をはたかれて軽くよろめく。

「いつまでひざずいてるつもりよ。さっさと、くれば」

 鼻で笑われた。あたしは目の前の女が憎らしく思えた。こんな生活をしながら、女として生きている女に憎悪があった。あたしは女でいたかった。仕事もまじめにこなしていたのだ。あたしは、女に覆いかぶさった。

「何よ、痛いじゃない」

 あたしは、女を殴っていた。おとなしくしろとも言ったかもしれない。よく分からない。

「ちょっと、きゃっ」

 あたしは女の中へと自分のモノを入れた。ずりゅっという音がするほど勢いよくいれたものだから、彼女が軽く沈み込んだ。股間と股間がぶつかり、彼女の乳が揺れる。あたしは、それも憎らしく思い、ぎゅっと掴んだ。股間では、どろどろとした穴の中に入れ込んだあたしの棒がぎゅぎゅっと押しつぶされるような感触に頭が沸騰しそうだった。手からは重く柔らかな感触が伝わってくる。

「ちょっと痛いってば、胸いたい」

 あたしは、胸を思い切り吸った。まだまだ吸い足りない。

「きゃっ、あっあっあっあ、う」

 あたしはそのまま、何度も何度も彼女の中を往復し、そして、何度も吐き出した。しかし、その後、ひどい嫌悪感が襲ってきた。

「死にたい・・・」

 あたしはベッドの中でうつぶせになって彼女の尻を見ながら、そうつぶやいた。4度目ともなる射精を背後から入れた後だった。あたしの股間では彼女の液体とまじった自分の液体がべったりと付着している。あたしは、男として女とセックスしたのだ。見ず知らずの女と。

「あたしは・・・」
「あんたは、なんちゃってオカマでしょ。もしかして、ただの女装君?」

 復活した彼女はベッドの脇においてあったスポーツドリンクを飲みながらそう言ってきた。

「でも、まあいいわ。なかなか、ワイルドだったわよ。顔に似合わず。知ってた? ここの部屋ってビデオしかけられてるの。まぁ、知らないと思うけどね。金山さんってそういう趣味な人なのよ。自分のためのAVを作りたいってね。わたしはさしずめ主演女優かしらね。ふふ」
「うそ・・・」
「本当よ、まあ、電波でとんでるから、テープとかないわよ。あ、でも、そこのデッキで見れるはず」

 そう言うと彼女はシャワーへと向かった。あたしは、その自分の犯した情景を見ていた。口紅を引いたあたしが、風俗嬢のような女を組み敷いて腰を振っていた。

「いっしょに浴びる? もしくは、もいっかいする? って、あそこまでやったらさすがに厳しいわね、きゃはは」

 シャワーの音が聞こえている間、あたしは、ひりひりするおちんちんをタオルで一度拭き服を着るとその部屋を出ようとした。すると、その時電話が鳴った。金山さんが必ず出るようにと言っていたから、あたしは受話器をとった。

「よう、男になったじゃねえか」

 絶対忘れない声がそう言ってきた。

「いい女だったなぁ。いいもの見せてもらったよ」
「まさか、電波で!?」
「ふっ、そんなことはどうでもいい。しかし、お前もオカマというよりは男になったからな、今度は彼女をつけてやろう」
「彼女なんていらないわ。お願い、あたしを元に戻して!」

 思わず声を荒げてしまった。言い過ぎたかと思い、冷や汗が出てくる。

「そうか、彼女より彼氏がほしいわけだな。堀って掘られてか、ふふ。それもいいな。じゃあ、楽しみにしてろ」

 それから、風俗嬢とあたしは同じ時刻に出勤することになった。以外に近い店で働いていることも分かる。でも、彼女はまた入れさせてあげると言い残すとさっさと店に入っていった。あたしも店に戻るとマイさんが控え室に入るのをとめてきた。なにやら新人が入るらしい。まだ入って間もないあたしが既に先輩になるとは、こういう業界は人の出入りが激しいのだと感じた。

「あ、メイちゃん」

 奥からママさんが出てくる。後ろから濃紺のスーツを着た女性が現れた。いえ、女性と言うのはこの場合ありえない。オカマさんなんだろう。しかし、その顔が見えた瞬間あたしは顔を逸らした。心臓の高鳴りが周りにも聞こえるだろう。

「こちら、ナコちゃんよ。見習いということで今日から入ってもらうわ」

 それは加奈子だった。あたしは顔を逸らしたまま、ホールを後にする。照明がなかったあたしの方は一瞬で見えなかったはずだろう。あたしは、加奈子があたしを探しに来たのかと一瞬思った。でも、そんなことが甘い考えだと次の瞬間気づいた。あの男は、あたしに彼氏を作ると言ったのだ。加奈子を彼氏にしようとして、あたしのようにしてしまうのもおかしくない。その時、電話が鳴った。

「よう。逃げちゃかわいそうだろう。せっかく気の合う友達と掘りつ掘られつできるのに・・・」

 あたしは周囲を見回す。あの男はいない。

「加奈子は巻き込まないでよ!」
「俺の親切心がわからないようだな。仲間を増やしてやったのに。まぁ、互いに慰めあって、せいぜいがんばるんだな。ところで、2人とも戻してほしければ、さらに500万円追加だ。といっても、あと一ヶ月強くらいしか残ってないな、ふふ」

 そういうと電話が切れた。あたしは店に戻ると加奈子の前に立った。彼女はあたしがここいることも、あたしがオカマにされていることも知らないようで、相当ショックを受けていたようだった。でも、あたしたちは死に物狂いで働くことにした。仲間がいると本当に嫌なことでも乗り越えられそうだった。

「ナコちゃんとメイちゃん、もっとこう腰ふって。そや、そう。まあ、あんたらやったら立派にAVにも出れるわ」

 あたしは金山さんにいわれるまま、加奈子とセックスをするまでになっていた。当然、お互いに女性器はないわけで、おしりを使ったものになる。

「ナコちゃん、けつの穴がしまって、ちんこが力はいっとったど。やっ、おおっ。出よった。なんとも、やらしいのー」
「メイ、おっきいよぉぉ」
「ナコも、締め付けられてまた、出しちゃう」
「あたしもまた出ちゃう」

 金山さんは自ら、あたしたちの体を求めることもあるが、このように絡んだ姿を見せることが多い、そう、あたしは、加奈子と掘ったり掘られたりという関係になったのだった。金山さんに見せないときでも慰めあうことが多い。そして、見せた分は報酬がもらえる。本当に気前がいい人だ。
 
 そして、約束の2ヶ月になった日、あたしは加奈子と共にいた。バーで稼いだお金と金山さんからいただいたお金を合わせても足りなかった。しかし、金山さんにお金がいると言うと前借という形をとってくれたのだ。そして、あの男から電話がかかってきた。

「振込みを確認した。よく1000万円ためたな。本当に成し遂げるとは思わなかったよ」

 まるで最初から失敗を期待していたとでも言うような言葉だった。

「お願い、あたしたちを元に戻して」

 あたしはもう使い慣れた男の声で嘆願する。

「ああ、いいよ」

 あっさりと承諾した。

「ただし、こっちも忙しいんでね。直接というわけには行かない。代わりに現代医学に出張ってもらうことにしたよ。すでに1000万円は性転換手術費用と言うことで話をつけているからな感謝しろよ。手術では玉抜いてまんこを作るそうだぞ。お前たちも立派なニューハーフになって帰ってくるんだな。おっぱいもスイカみたいなのにしてくれって伝えてるからな喜べ。ふふふ。じゃあな」

 その瞬間、マンションの郵便受けに手術の案内が書かれた封書が入れられた。あたしが外を見たときには誰の姿も見えない。あたしたちは抱き合い、そして泣いた。

 

「目標、ターゲットとの接触を終了するようです。はい、監視対象は、IVを着用して移動中」

 私は、ある組織のエージェントをしている。今回の任務も、ある男を引き続き監視することだ。干渉は最低限にしなければならない。今回、2人の女性が被害にあった。彼女たちもまた施設に送られ、皮を解除された後、記憶を操作され戻されるのだろう。ただ、今回は接触した人数が多い。この件の証拠などの回収は困難だろう。
 ところえ、目標は、非常に偏った性癖を発揮する。金山という男は目標が演じていた。前回は、女性型の顔モデルナンバー2を利用したが、今回は男性型の顔モデルナンバー3を利用したようだ。演技力の向上や下準備の確実さから判断するに目標の知能はかなり高い。やっかいな相手だ。
 さて、今回は2ヶ月という期間となったが、その間に別のターゲットを物色していたようだ。では、目標の監視を継続する。

 

 

 

 


 



あとがき
前作のターゲットは男にに続く作品です。
狩谷はいったい何を考えてこんなことをしてるんでしょうかね。まぁ、楽しいからとかでしょうけど。ちなみに、toshi9さんのサイトで強制化祭りがありまして、そちらに投稿させていただきました。


石山