水着跡


2008.8.13
作:石山



夏の日差しが白い砂浜を焼く。笑い声や名前を呼ぶ声、海の家の呼び込み、監視員の注意など砂浜には多くの声が交錯している。その中、明らかな嘲笑の波が伝染していっている。
「やだぁ、あれって変態?」
ギャル風な女性がボリュームも絞ろうとせずに発言する。
「あぁ、やったなぁ。高橋の背中にうんこの形に日焼け止め塗ったりしてさ」
やたらと盛り上がる男達。
「あのお兄ちゃんもブラジャーつけてるの?」
あどけない子供の高い声は響く。

その渦中にいるのが、引き締まった肉体を女物かとも思える小さなビキニに包んだ男だった。しかし、ビキニパンツなら立派な肉体を晒した男達が他にも居る。ただ、その彼は違っていた。完全なビキニの上の日焼けがあったのだ。ちゃんと胸を包み込むようにカップの形、さらに型紐、背中へと続く紐まで白い跡がついている。

「ねぇ、ちょっとってば」
「ああん?」

周りの話題を一瞬だけさらっていった男の子が前を歩く男の子に声をかける。なぜかその二人は良く似ている。

「離れて歩かないでよ」
「いやだって、恥ずかしいじゃん」

そういう彼は妙な日焼け跡から目をそらしている。

「だって仕方ないじゃない。流れちゃって、そのままじゃ、見られちゃうし・・・」
「ミナ、だからって、こんなところで俺に変身する必要ないだろう!」

なるべく声を潜めるが、周りからは引き続き奇異の目が向けられている。

「だって、傍にあったコピーできるものって、トウヤくんの体しかなかったんだもん・・・」
「まぁ、それは仕方ないけど・・・」

その時、シャッター音が聞こえる。ギャルたちが立ち止まる可愛い感じの男の子の双子を携帯に遠慮なく収めていた。

「いやんっ」
「ちょっ、そのポーズはやめてくれって」

胸を両手で押さえるトウヤの体をしているミナを追いかけるトウヤだった。流れる汗は、暑いだからだけではないのは確かだった。



あとがき
男になっても恥ずかしいのは恥ずかしいんですよ。



石山