父の話


2008.8.13
作:石山



夜遅く帰宅した父の姿を認めた息子が相談を持ちかけた。何度ももじもじしながら、相談の内容が伝えられてくる。
「あはは、そんなことかー」
疲れて帰った父は解いたネクタイを弄びつつ、苦笑する。
「それは男の子なら仕方ないことなんだよ。じゃあ、父さんの時のことも話してあげようか」
そこから、話が始まった。

そこは、ベッドの上だった。
「さーちゃん・・・。気を強く持つのよ」
そういって手を強く握ってくれていたのが母だった。よく見ると病院だった。母は、私の両手を握りながら話を続けていった。
私は中学の合宿に来ていて、散策にと入った森の中で穴に落ちたそうだ。
ただの防空壕かと思われたそこには、化学薬品が多量に放置されていたようだ。断定は出来ないが、兵器庫なのかもしれないそうだ。そこで見つかった私は、薬品にまみれた状態だったと・・・。
「でもね。命があるだけ・・・」
そこで私はからだをぐっと起こした。両手を掴む母の手を振り解き、顔を触る。顔は何もなっていない。私はベッドの脇にある鏡に顔を写した。やはり大丈夫。頭にこぶがあるようだったけど、痛みはもうない。
「さーちゃん・・・」
そこで体をしらべはじめる。腕はどうもなっていない。少しあざができて、痛みもあったけど骨が折れている様子もない。足も同じ。立っているんだから大丈夫。でも、そこに至る部分で、パジャマが不自然にゆがんでいた。
「あ、あっ・・・」
母がおどおどしている。私は、それを見て血の気が引いた。何かが私の中に入っている。きっとここを手術したに違いない。でも、その想像は裏切られた。悪い意味で。

息子はきょとんとして聞き入っている。
「まぁ、ちんこが生えるって言うのもなかなか出来ない体験だったからなぁ。しかし、その次の日には、射精を体験しちゃってさもう、びっくりしたのなんのって。
見舞いに来た同級生から隠すの必死で握ってたら目の前でどくどくっと出てさ、ははは。あ、一緒に散策してたのが同級生の母さんだよ。まぁ、お前よりも少し年上だったけど、大丈夫。男なら当然な生理現象だよ」

「ごめん、父さん。告白がすごすぎて教訓が分からない・・・」
「あら・・・」
とりあえず、父の名前が佐織な理由が分かった11歳の夜であった。



あとがき
さらっとカミングアウトというのもいかがでしょうかね。というか、今まで聞かなかったのが不思議なくらい・・・。



石山