通信機もエンジンも故障した宇宙船は私に緩やかな死をもたらそうとしていた。そこでの救いは、私が深宇宙で発見した鉱物だけだった。
「今日は誰になるのかな・・・」
一匹狼を気取った私は、気を紛らわすために、その鉱物の調査を行っていた。そして、それがある力をもつ鉱石だと気づいたのだ。
はじめて取り出した時、私はわずかな浮遊感の後、ある少女の姿へと変わっていた。白い砂浜に立ち赤い帽子を被っていた。そして、母親らしき女性によって宇宙船では食べられない新鮮な魚介類を使った料理を作ってもらった。
「本当に食べたみたいだったな・・・」
夢のような時間をすごした後、自分が宇宙船の中で横たわっているのに気づき落胆したのだった。しかし、その鉱石は私にとって至福ともいうべき時を与えてくれた。時には、若い女性になり甘い時を過ごさせてくれる。時には、子供になり友との遊びにあけくれる。そして・・・。
「ここは・・・」
それは、我が家だった。正確には私が出た家だ。
「おかーさん、どうしたの?」
え? そこには息子がいた。そう、離婚してから何度も会っていない息子がでてきたのだ。
「おかーさん? ミーニがいるのか」
私は振り返った。しかし、いない。
「おかあさん?」
そして、ようやく息子の言っている意味が分かった。私の体がミーニなのだ。私はこの白昼夢を楽しむことにした。ミーニと話せないのが残念だが、息子とのひと時は泣きそうになるくらい嬉しいものだった。
「そうだ・・・。ビデオでも・・・」
私はミーニの姿が見たくて自分をビデオに撮る事にした。ひざで眠る息子の髪を撫でながら、その姿をディスプレイに映す。
「あーあー。ミーニ?」
離婚のときにさえ愛していたミーニは、未だ若く美しかった。
私は、いかにミーニを愛しているか。そして、再び会いたいということ。最後に自らの墓標の場所を告げた。そう、数ヵ月後には来る餓死が宇宙船を墓標にしてくれる。たとえ夢でも言えてよかった。
「愛してるよ・・・」
ディスプレイの中のミーニが私のために涙を流してくれていた。
それから数ヶ月後、栄養失調で朦朧とする中で、涙を流すミーニを見た気がした。
「私も愛してるわ」
この夢は覚めなかった。