踊りを継ぐ者 


2007.10.08
作:石山



 

 俺は魔王を倒す。

 俺は親父にそう伝え、実家には戻らずにぐだぐだと1人暮らしをつづけている。もちろん、魔王なんて倒せるあてもなく、俺はタダの見習い魔法使いだったりする。いまは、街の街灯に火を灯す仕事をしながら、食いつないでいる。

 なぜ俺がこんなことになっているか。それは、親父の家系に理由があった。親父は地鎮祭での踊りを継ぐ者だった。そして、それは子に継がれる。

 そして、その地鎮祭。これは、この世の災厄である魔王を鎮めるものだった。そのため、俺は魔王を倒すと言って家を飛び出した。初めは修行にも明け暮れた。しかし、剣も魔法も中途半端だったのだ。俺に魔王を倒すことは不可能だと、早い段階でわかった。

 そういうわけで俺は街でバイトをしながら食いつないでいるのだ。このままでは、魔王を倒す事もできず、バイトをつづけなければならないという自縄自縛の状況だった。

 しかし、そんな俺にも幸運が訪れたのだ。伝説のアイテムを手に入れた。街のドブ掃除をしていたときに見つけた古い地下水路を見つけてしまったのだ。それは1つ願いがかなう宝石だったのだ。

「魔王を倒してくれっ」
「無理だから・・・」

 宝石が断りやがった。

「そう言わずに」
「別の願いにしてくれ」

 俺はそこで考えた。

「じゃあ、俺を女にしてくれ」
「それならいけそうだ」

 俺は女になった。なかなかの美形だった。俺は悠々と実家へと戻った。親父はいつもの鍛錬を怠らない。庭先で踊っている。

「どなたかな?」

 親父は股間にいくつかのコスモスの花を当てており、上半身は裸で浮いた肋骨を晒している。俺に話しかけている間も、くねくねとした気持ち悪い動きを続けている。俺はこの踊りが大嫌いだった。こんなことをするなら、魔王を倒すほうがましだった。しかし、今なら大丈夫なのだ。もう、こんなことをしなくてもよい。
 俺は、親父に息子である事を継げた。なかなか信じてもらえなかったが、いくつか昔の話をすることで信じてもらった。

「そうか、そうだったのか・・・女になってしまったのか」

 親父は頭の上からつま先まで舐めるように見られた。

「そういうことなんだ、だから踊りを継ぐ事はできないんだよ・・・。ごめん」

 男にしか踊れない踊り。祖父も親父もその醜い踊りを踊っていた。

「いや、気にするな。これは元々巫女が踊るんだからな。いやぁ、これは好都合だって」
「な、なんだってー!」

 親父は自分のコスモスもむしると、俺に押し付けてこういった。

「さあ、踊りの練習だ」

 俺は自分の浅はかさを恨みつつコスモスを受け取った。

 



あとがき
即興作品です。ぴんとくる方はお分かりだと思いますが、元ネタはキタキタおやじです。

石山