コーヒーにミルク


2007.09.30
作:石山



 


 俺は駅から歩いてかえっていた。夕方になっていたがまだ暑い。

「みーきーこー」

 そういって俺の胸にしがみつく奴が居た。指が絶妙に動いていく。俺はショ

ルダーバッグを振るスイングして背後の男にぶつけた。

「いった。何すんだ!」

 背後の男はよけることも受ける事もせずにいまだに俺の胸にしがみついてい

る。

「叫ぶぞ?」

 そう言うと男は手を離した。

「みきこ、つれないなー」
「俺はみきこじゃない、涼だよ」

 男はすごい勢いで驚いて、なおかつこける。そして、土下座を始める。

「すまん、すまん。お前があまりに似ていたもので」

 俺は恥ずかしいそいつを連れて近くの喫茶店へと入った。周りから見れば、

路地裏に連れ込んで殴る蹴るの暴行でもしそうな勢いだっただろう。おかげで

、喫茶店のマスターが驚いていた。

「いやぁ、お前とのデートもいいなー」

 そう言って、さっさとコーヒーを注文する。こいつはいつもブルーマウンテ

ンだ。

「お前は何にする? よければおごるぞ? 今日はいっぱい勝ったからな」

 男はそういうと紙袋に詰まった景品を見せ付ける。俺は同じものを頼んだ。

 サイホンがぽこぽこと音を立てている。そのうち、コーヒーが出てくる。

「ミルクはいれないのか?」

 男がそう聞いてくる。男自身は、ブラックで飲んでいる。

「俺もブラックだよ。男だからな」

 男がくくっと笑う。

「男の時だってミルクと砂糖いっぱい入れてたくせに、女になったとたんにブ

ラックか?」

 俺が笑うなと起こると男は紙袋の中からチョコレートを取り出してきた。

「すまん、これで機嫌直してくれよ」
「くっそ、子ども扱いしやがって」

 男は再び笑い始めた。その時、窓の外を妹が通り過ぎた。俺と男の組み合わ

せにすぐに気づいたようだ。喫茶店へと入ってくる。

 妹も仕事帰りみたいで、俺と同じような服装をしているとよく似ている。確

かに見間違えない事もない。

「お兄ちゃん、またやられたの?」
「まただ」

 男は、ソファで嬉しそうに俺と妹を眺めていった。

「これは、あれだな。いずれ菖蒲か杜若ってとこだな。まるで美人姉妹だ」

 男はそういいながら、おいしそうに苦いコーヒーを飲みきった。

「ねえ、私の揉んだ事なんてないのに、変な言い訳してお兄ちゃんのを揉んだりするのやめたげてって言ったよね」
「はいよ。ごめんなさいね」

 そういってまた、俺の胸を揉みやがった。くそ親父め。 

 

あとがき
即興です。


石山