仕事は器
2008.01.17
作:石山
私はラン。お屋敷でメイドをしています。お料理が主なお仕事です。このお屋敷での仕事はもう長いんですよ。え、何年ですか? そんなこといっちゃったら、歳がばれちゃうじゃないですか、もー。
このお屋敷は変わっていて、人間界なんかに作ってしまったものだから、物資の調達がとても大変なんですよね・・・。今日も執事のタイオウ様が物資の素になる人間をかき集めてきました。
耳をすませてみますとね、物に変えられた人間たちの声が聞こえるんですよ。このお屋敷のほとんどが人間からできていますから、うるさいくらいに。
「ちょっと、もっとやさしくこすってよ! 玉の肌に瑕がついちゃうじゃない!」
はいはい・・・。この娘はいっつもうるさいんだから。でも、しっかり洗ってあげます。しっかり洗わないとあたしが怒られちゃうんだから。
「ランさん、今日はもう調達する物品はありませんね」
執事のタイオウさまです。タイオウさまが物品調達を一手に引き受けられているものだから、仕事が増えるのを嫌われています。あたしにも力があれば、お手伝いもできるのですが。
「あの・・・それが。これ割っちゃって」
あたしは、箱に入れた大きな甕とその他もろもろをタイオウさまにお見せしました。
「むむ、少しの破損ならなんとかなりますが、これじゃあ、契約解除しなくちゃならないじゃないですか」
タイオウさまは、苦い顔をして箱を覗き込まれます。そんなこと言われても、わざとじゃないんだもん・・・。ほんとなのよ、ほんとなの。ぐすぐすっ。
「わわわ、責めてるんじゃありませんよ。形あるものいつかは壊れますからね。ランさんも思いつめなくていいですよ。ほら」
タイオウさんがにこっとあたしの顔を覗き込んできます。タイオウさんは、とってもやさしい人だからいつもちょろいです。いえ、今のは聞かなかったことにしてくださいね。えへ。
「それじゃあ、この方たちを元に戻しますか・・・、手伝ってもらえますか」
あたしはタイオウさまに従って裏庭にある倉庫へと向かいました。物を人間に戻すためには人間界の倉庫で行う必要があります。なぜって、戻った途端に裸なんですもの。すぐに服が必要でしょう?
あたしは、割れた甕と穴の開いたひしゃくに耳を傾けて見ました。どうやらこの2人は知り合いみたいです。そういえば、セットで仕入れたんだっけ。
「あああ、真ん中から真っ二つよ!」
「マーサ、俺の方は穴が開いちゃってるよ。もう君の中からお酒をすくうことができなくなったよ」
状況がわかってないようね。やっぱり壊れちゃうと周りが見えないのかしら。
「この2人の服を出してきてあげてください」
あたしは、タイオウさま言いつけに従って、箱に入れた服を取り出してきました。
「この2つは夫婦だったから、一緒に戻しても大丈夫だろう」
タイオウさまの術が2つの間を駆け巡っていきます。あら? なんだか、光の色がおかしいです。
「タイオウさま、おつかれですか?」
「んー。真っ二つに割れたものですからね。ちょっと直すのも骨が折れます」
だってだって・・・。鍋が重くって、ちょっとふらついただけなんです。ううう。
「あぁ、気にしなくても大丈夫ですよ。ランさん。ちょっと・・・あら」
タイオウさまが気の抜けた声を上げました。光が収まっていく中に、3人の人影が現れました。
「マーサ?」
「クラーオ」
「クラーオ」
男の声が1つに女の声が2つ。
「え?」
「あー」
細身の若い女、それも瓜二つの2人が男を挟むように座っています。女2人は細身ながらも大きなおっぱいを持っています。自分の体を確かめるように胸を揉んでいます。
2人とも同じ顔、同じしぐさで体を確かめています。おおきなおっぱいなんてうらやましいわけじゃありませんよ。
「マーサなのか?」
「そうよ」
「そうよ」
タイオウさまがシーツを3人に差し出しながら、髭をなでつけます。
「ちょっと、失敗したようですね。割れた破片がそれぞれ、元に戻られたようで・・・」
「でも。おかしくありませんか? マーサさんって確か・・・もっとふくよかというか・・・」
おでぶちゃんでしたよ? 私2人分よりも重そうな。
「そうだ、そうだよ。俺のマーサはどこいったんだよ。あの抱いても手が回らないほどの胴。窒息しそうな巨大な乳房! 揺れる二の腕。俺の俺のマーサを返してくれよ・・・」
クラーオさんが涙を流して本気で悲しんでいるようです。人の好みはいろいろですね。今いるマーサさん2人はすごい美女なのに。
「参りましたね」
タイオウさまが、髭をなでつけながら微笑んでおられます。あまり困っているようには見えないです。
「いやよ!」
「いや!」
え?
「私は戻りたくないわ。こんなに、こんなに美しいんですもの」
「ほんとにきれいだわ」
2人のマーサさんが向かい合って自分の顔を舐めるように見つめています。
「クラーオ。私たちの4つのおっぱいはどう?」
「あぁぁぁ。そんな、うああ」
クラーオさんの悲鳴が聞こえてきますが、あたしとタイオウさまは夜も更けていますので、そのままお屋敷のほうへと戻る事にしました。
「明日の朝には答えが出てますかね。2人のうち1人余ったら、新しい甕が手に入るかもしれませんね。ははは。まあ、どちらでもいいですが」
タイオウさまは、そういいながらにこりとされました。本当に何を考えているのかよく分からない方です。
あとがき
TFが好きな人は、変身中が好きな人と、変身中が好きな人、変身が解除されたときが好きな人 といろいろいるはず!
私は、えーと、どれも好き(笑)
でも、作品としては変身解除後っていうのがおもしろそーな、そんな気がします。
石山