おとりの小学生


2007.11.7
作:石山



 

俺は極秘に開発された機械を使っておとり捜査を行っている。
 この小学校を中心とした半径5km以内において立て続けに女児へのわいせつ行為が行われているのだ。俺は、竹さんと大きなランドセルを背負って小学校へ潜入せよという指令を受けた。もちろん、学校外で女児達はわいせつ行為を受けた訳なのだが、小学校に通う必要まであるかどうかはボスの判断を信じるしか無かった。

 竹さんは竹さんの息子さんよりもさらに幼い少女となっている。そして、俺も含めてどちらも美少女と呼べる物だ。その手の趣味がある男ならば、必ず目をつけそうな幼い中に色気を放つ美少女だ。あ、今の解説は、ボスの説明のままなので、決して俺にはそういう趣味は無い。

「竹子のパンツはしーろ」

 俺が女子トイレから竹さんと出ると、いきなり背後から男の子の声がした。まだ、声変わりもしていないキンキンと響く声だった。そして、目の前に竹さんのイチゴ模様の白いパンツが晒される。スカートは完全にめくれ上がって、そしてゆっくりと戻っていった。
 ふるふると怒りに揺れる竹さんはなんとか怒りを抑えたようだ。鬼の竹さんは、少女になってもその気質が抜けず、厳しく子供を叱りつけるのが日常茶飯事だ。潜入捜査ということを忘れている訳ではなさそうなので、そういうキャラ設定だということで納得しておいた。

「竹子ちゃん、大丈夫?」
「ふん、なんともないよ。あんなのに見られたって平気だもん」

 口調がいつものとは違い柔らかくなっている事からも安心した。ところで俺は、おとなしいキャラとしてクラスにとけ込んでいた。逆に竹さんは、強い女子ということで男の子がちょっかいを良く出してきていた。男の子からすると張り合いがあるのだろう。やんちゃな男の子が数名、良く絡んできていた。もちろん、竹さんの一瞥や一蹴に対して無力では有ったが。そして、転校から一ヶ月経った頃、竹さんは女王というあだ名になってしまった。

「竹さんも災難ですね」

 そう言って俺は鉄棒に寄りかかりながら世間話をしていた。この位置は外部から目につきやすい。俺たちを品定めするには最も良い場所ということになる。そして、俺はたまにスカートでくるりと鉄棒をくるりと回ってみせる。

「ふん、わしが女王とは、かゆい話だ」

 そう言って竹さんも白いパンツをちらりと見せてくるりと回った。俺と竹さんは、その時、視線を感じた。

「おい。竹子。勝負だ」

 竹さんに体育でもさんざんにやられているガキ大将の剛志がやってきた。さっきの視線は子供の物じゃなかったはずだが・・・。

「ふーん、あたしに勝負なんて、100年はやいんじゃない? ぼーく」

 竹さんの挑発がクリティカルヒットした。

「鉄棒連続何回まわれるかで勝負だぞ」

 やれやれ。俺は二人が回るのを目が回りそうになるのを我慢して数えるしか無かった。平和だ。

 俺と竹さんは、下校時に監視カメラの設置してあるルートを通る事になっている。そして、互いの声が聞こえるように無線でのやり取りをしている。もちろん、気づかれないようにだが。

「竹さん、今日もこちらには来ませんね」
「そうだな、山さんの方かもしれんな」

 もう1つの小学校に通っている班の事だ。

「あしたはカレーが食べたいな〜」

 俺の体に緊張が走った。いきなり文脈を無視した発言、これは竹さんからの合図だ。竹さんの周辺に怪しい人物がいたのだ。俺は、駆け出すと本部に連絡を入れる。少女の体では、安全に対処できるとは限らない。俺は、スカートが翻るのを気にせずにエナメルの靴で全力疾走を始めた。今の時間なら、竹さんは河川敷のあたりを歩いているはずだ。

「誰なのっ」

 竹さんの声が聞こえる。切迫した事態だ。がさごそと衣擦れの音がする。荒い息づかいが聞こえる。

「お嬢ちゃん、大丈夫大丈夫、暴れなければ気持ちよくしてあげるから」

 滑舌が悪く、酔ったようなダミ声が聞こえてくる。竹さんは、捜査官が来るまで抵抗せずに嬲られる。そういう設定だ。俺は、現場の確認を急ぐ。

「だ、だめぇ」

 泣きそうな少女の声が聞こえる。それは女王と呼ばれた少女とは違う、気弱な声色だった。さすが、竹さんだ。男の呼吸がこちらまで聞こえてくる。奴はもう、はち切れんばかりに反応しているだろう。ぺちゃぺちゃと水音が聞こえる。今までのケースから考えると脱がされた上に舐められているのだろう。

「ううっ。そんな所舐めちゃだめ・・・おしっこするところなの」

 竹さんの解説により今までの手口と同じ事が分かった。奴はこの後、本番まで行うのだ。非道な犯人に竹さんを毒牙にかからせるのは心苦しい。もう、十分に現行犯逮捕が可能だ。

「何してるんだ!」

 その時、聞き慣れた声がイヤホンの遠くから聞こえてくる。いつも学校で聞く、剛志の声だった。さらに近くで剛志の声が聞こえた。

「竹子になにしやがんだ、おっさん」

 これは、危険だ。一般人を巻き込んでしまった。俺は、さらに全力疾走をする。スカートがひらひらとなびいているが構う物か。ようやく川が見えてくる。しかし、場所が分からない。

「うああ」

 剛志の悲鳴が聞こえる。俺は青くなりながら周りを見回す。すでに応援が駆けつけてくる時間なのだが、あ、見えた。橋の下で子供2人に男が1人。

「やめてっ、剛志に乱暴しないで」

 竹さんは演技を続けているようだ。白い裸体が緑の草の間に浮かぶ。俺は河川敷の深い草に隠れて近づいていく。遠くに応援の姿が確認できた。

「へへっ。大丈夫だよ、ちょっとお嬢ちゃんのアソコに入れさせてくれたらね」

 その時、剛志が動いた。男につかみかかったのだ。しかし、再びはねとばされる。そこに竹さんがすばやく間合いをつめる。

「やめろって言ってんだろ、こんにゃろが」

 そう言って腕に取り付いた竹さんは綺麗に間接を決めた。気を失った剛志の側で、捜査官たちに犯人が押さえつけられた。

 事件がこうして解決を見た訳だが、後日談が有る。軽く頭を打った剛志は1日の検査入院をされていた。そこに竹さんは、見舞いにいったのだ。自分を助けにきてくれた男の子に対する礼を言うために。一足早く元に戻って車で病院に送った俺は、その光景を見ていた。

「剛志、ありがと」

 そう言って竹さんは、自分で焼いたクッキーを剛志に渡していた。そして、恥ずかしそうに言ったのだ。

「たまたま作りすぎたんだからな。本当だからな」

 こうして俺の中で、鬼の竹さんはツンデレの竹さんに変わった。



あとがき
ツンデレって言いたかっただけなんです。



石山