おとりの夜道


2007.10.31
作:石山



 

 俺は極秘に開発された機械を使いおとり捜査をおこなっている。
 先月からこの近辺で起きている婦女暴行事件のおとりとして要請がかかった。うちも人手不足のせいか、俺は所轄の刑事と組むはめになった。当然俺がおとりだ。俺は20代前半のOL風の姿で人通りの少ない住宅地の中を歩いていた。しかし、それらしいのはいない。俺はカツカツとハイヒールを鳴らして路地裏に入ると停めてあった車に乗り込んだ。

「お疲れ様です。西尾さんの好きな紅茶ありますよ」

 車で待機していたのは所轄の刑事だ。俺によく尽してくれる。俺の本当の姿をみたら、さりげないアプローチも終わるんだろうが、それはできない。ちなみに西尾史子名義の手帳も西尾という名前も嘘だった。しかし、偽造ではない。ただ、俺の課の保有する1つの顔だった。

「ありがとうございます」

 俺はなるべくそっけなく言った。初日から俺に一目惚れした若い刑事が、一線を越えてこないようにするためだ。

「何事も無くてよかったです」

 バカ野郎。俺はおとりなんだから食い付いてもらわなけりゃ意味ないんだよ。俺が心の中で毒づいてるとも知らずに俺の顔と胸をちらちらと見てくる。まあ、俺も自分の姿に興奮することがあるから仕方ない。レイプ魔をおびき寄せるにはこれくらいの美女じゃなければならない。

「そういえば、1班からの連絡は?」
「ないですね。もしかして、気づかれたのかも・・・」

 一応受け答えはしっかりしているが、かなり鼻息があらい。俺のあまったるい香水でも吸い込んでいるのだろうか。やばいな・・・。こいつ、かなりきてる。この前は小物だったし、今度はアクセサリとか持ってこないだろうな。
 沈黙の中、俺が紅茶を飲む音だけが車の中に響く。

「あの・・・。西尾さん。西尾さんは、なぜ刑事に・・・それもおとり捜査なんて危険な任務についてるんですか」

 俺の場合は、ちょっと器用すぎたのが問題だったのかもしれないな。おとり捜査についているのは、そういう課だったので仕方がない。俺が応えないままそう考えていると無線が鳴った。1班からの連絡だった。星らしい男がひっかかったらしい。俺たちは応援に近くの公園に向かった。おとり役の泣きの山さんが襲われているところを現行犯逮捕するのだ。

 俺たちは、公園の南口から入り込んだ。連絡によるとレストハウスの近くに向かったらしい。周りは暗く、人通りは全くない。

「西尾さん、私が先に行きます」

 そう言って俺の前を行こうとする刑事。俺は、走りにくいハイヒールだったこともあり、それに従った。

 俺たちが植え込みの中からしゃがみこんで様子を見る。するとレストハウスの裏で影が動いた。白い体が電灯の弱弱しい光にぼうっと浮かんでいる。山さんだ。

「なっ」

 俺は叫び声をあげて突き進もうとした相棒を後ろから押さえ込む。

「まてって」

 俺は刑事の頭を胸に抱え込んだ。とたんにおとなしくなる。

 いつもはワンカップと腹巻の似合う山さんは、いまや網タイツの似合うOL風になっていた。見える限りはその網タイツはすでに破られてしまっているようだ。俺は相棒を連れて、少しずつにじり寄った。

「あ、うんん」

 山さんの上に男が馬乗りになっている。腕を突き出して暴れる山さんは、すでに豊満な乳房を露出している。山さんの腕を掴んだ男は、山さんの短いスカートを脱がせた。網タイツと黒いショーツが白い肌に浮いていて思わず生唾を飲み込んでしまう。俺は相棒の腕をぎゅっと握り、動きを制す。

「山さんは、まだ合図を出していない」

 山さんは、手を振り解こうと暴れる。口は押さえられてしまっており、声が出せないようだ。しかし、それも演技だ。山さんのぐぐもった泣き声が聞こえてくる。

「へへへへ」

 レイプ魔は不気味な笑いを漏らした。山さんを殴りつける。さらに殴る。山さんが殴られたまま、おとなしくなる。

 俺は駆け出そうとする相棒の体を押さえ込むので精一杯だった。相棒が暴れるものだから、チューブトップから胸がこぼれでてしまった。相棒は、またおとなしくなった。

 そして、レイプ魔が山さんの中へとその小汚いものを差し込んだ。獣のような声がする。レイプ魔の雄たけびだろうか。そして、レイプ魔が山さんを突くたびに、山さんの胸が揺れる。男は山さんの足を抱えたまま、ピッチをあげる。そして、数瞬の後、動きを止めた。荒い息遣いが聞こえてくる。

「あふあふ」

 レイプ魔が山さんの体に注ぎ込んでいる中、抱えられた山さんの網タイツの足がぐっと持ち上がった。そして、男をぎゅっと挟み込んだ。

「な、なんだ」

 慌てたレイプ魔が振りほどこうとする。

「誰か助けてー」

 山さんの合図だ。1班の連中が飛び出してきた。俺たちも直行した。男は、山さんとつながったまま現行犯逮捕された。

 俺が山さんを抱き起こす。山さんの涙は、まだ乾いていない。悲壮な顔で今日までの相棒が山さんから目をそむけた。

 しかし、山さんは相当感じていたようだ。アソコがびしょびしょになっている。

「今日のプレイは、70点やの。もう少し容赦ないほうがわしは好きじゃの」

 痛めつけられて感じる、いわゆるマゾの山さんは、こう呼ばれている。殴られてうれし泣きの山さん、略して泣きの山さんと。


 



あとがき
愛すべきおやじたちの女性化。いかがでしょうか。



石山