略奪

TAKE1 作


「とうとう捕まえたぞ、中々良い格好だな、アクアヴィーナス」
 魔王の前に縛られて連れられたアクアヴィーナス、
「くっ、私をどうするつもりなの」縛られたアクアヴィーナスはつぶやく。
「ふっ、貴様には今までわれわれの仲間を葬られてきた、そして人間にはそれは希望になる、
 人間共の希望は我々の力を下げる、そこで貴様がした分の償いを受けてもらう」
「何をするつもりなの」
「何簡単なことだ、おいっ」魔王が声をかけると奥から得体の知れない物が現れる。
 外見は蠢く蟲のようで動いた跡には粘液のようなものが残っている、
 そして動くたびに凄い悪臭を放っている。
「ウゴァァア・・・」声にならない叫びを上げる異形の物。
「うっ・・・」あまりの光景に思わず顔を背けるアクアヴィーナス。
「いやなに、君とこの魔物との体を入れ替えようと思ってね、
 君ほどの力を持つものが絶望すればそれだけ我々の力が増す、
 そのうえ人間の希望のアクアヴィーナスが我々についたとなれば人間の絶望も計り知れないだろう、
どちらにしろ我々にはプラスだ」
「なんですって、私とこの魔物の体を入れ替えるですって」
「ふふふ、美の女神様に絶望してもらう為の中々良い器だと思わないか」
「いやっ、放しなさい」
「生憎君の言う事など聞く気にはなれんな、始めるぞ」
「イヤァァァ」アクアヴィーナスの絶叫が木霊する・・・。
 そしてしばらくしてアクアヴィーナスが目を覚ます、
「成功いたしましたね魔王様」しかしそれはアクアヴィーナスではなかった。
「ほう、その体はどうだ」
「素晴らしいですね、魔力、外見、共に申し分ないです」
 アクアヴィーナスの体に入った魔物と魔王が話す、
「ウゴァァア・・・」(あれ、私どうしたのかしら)
「おや目覚めたようだな、元アクアヴィーナス」
「ウゴァァア・・・」(何で声が出ないの、それになんか変)
「お目覚めですかアクアヴィーナスさん」そうしゃべっているのは自分だった。
「ウゴァァア・・・」(何で私が目の前にいるんですの)
 パニックになりそうで大声を上げてるのにそれが声にならない、
「ふふふ、肉体転移の呪文は成功したようだな、いい格好じゃないかアクアヴィーナス」
「ウゴァァア・・・」(いい格好?)
「そうだな鏡でも見たほうが良いな、おい誰か鏡でも持ってきてやれ」
「ほら見るんだ」そう言って差し出された鏡に映っていたのは蠢く蟲の姿、あの異形の物だっ
た、
「ウゴァァア・・・」(嫌ぁぁぁ)そう叫ぶ声も声にならない。
「ははは、中々いい格好じゃないか、美の女神である君には少々酷かも知れんがね」
「お気に召しませんでしたか私の体は」
「ウゴァァア・・・」(気に入るわけ無いじゃないの、早く戻して)
「おやおや?、何を言っているのか解らんね、何を言っていると思うアクアヴィーナス」
「よほど自分の体が気に入ったんじゃないんですか」
「どうやらそのようだな、そんなに気に入って貰えたなら此方も何よりだ」
「・・・」押し黙るアクアヴィーナス、
「そこまで気に入って貰えたのなら此方も誠意ある対応をしなければいけないな・・・、
 鏡の間を用意しろ、美の女神様に今の自分の体を認識させてやらねばな」
「「ハッ」」掛け声とともに数人の部下が現れる、
「連れて行け」
「「御意」」
 数人の部下はアクアヴィーナスを掴むと引きずり出した
「ウゴァァア・・・」(放しなさい)
 そうアクアヴィーナスが逆らうも数人の部下たちは物ともせずに連れ去ってしまった、
「さて、ではアクアヴィーナスになったお前は人間たちの下へ攻め込み人間たちを絶望の渦に
叩き込め」
「少々お待ちください、私はアクアヴィーナスに成り立てでまだこの体の力を完全には出せま
せん、
 この体の力を全て出せるようになってからの方がよろしいのではないでしょうか」
「・・・ふむ、確かにそうだな、変に偽者と思われても面白くはないな、解ったお前の意見を
受け入れよう、
 ・・・まあ焦る事は無いな、今の人間どもには対抗する手立てはあるまい、少々ゆっくりして
も良いだろう」
 
                  
                  
                  
「ハッ」自分の力を試すように色々な攻撃を試してみる、
 その結果自分が思い浮かべている以上に体が動く、さすがに女神というだけはある、
「この体、素晴らしい」そう思わず呟いた、
 今まで攻撃されてきた力が逆に自分の力として使える、
 その上美の女神というだけあって外見も申し分ない、
「この体の力・・・、もしかしたら・・・」私はあることを考えていた。
 
「さて、アクアヴィーナスよ、もうあれから充分に時間がたった、もう大丈夫だろう」
 魔王がそう声をかける、そこで私は
「ふふっ、貴方にそんなことを言われるなんて心外ですわね、
 私は貴方を滅ぼしに来たんですわ」と、アクアヴィーナスの口調を真似して話す、
「何っ、貴様どういう・・・」
「言葉通りですわ、今の私でしたら貴方なんかに従う理由は無いのですから、
 逆に自分の力を試すに従って貴方より上と判断しましたので貴方を消させていただきますわ」
「ふっ、出来るものならやってみるが良い」
「ええ、ならばこちらからいかせてもらいますわ」
 そう言って魔王に攻撃をする
「ふっ、効かぬ」攻撃を受け流す
「そちらは囮と言ったらどうします」そう言って追加攻撃を叩き込む
「ぐっ・・・」そちらは少し効いたようだ顔をしかめる魔王、
「ふふっ、少しは効いたようですね」
「面白い、本気で行かせてもらうぞ・・・」
「ええっ、いらしてください」
                  
 
 それから数時間の戦いが続いたがやがて終わりを迎えるときが来た、
「これで終わりよ」最後の一撃を叩き込む 
「ぐわぁぁぁっ、馬鹿な、この私が・・・」魔王が断末魔の声を上げている、
 やがて魔王は消え去った、
「はあっ、はあっ・・・」厳しい戦いを終え一息つく、
「終わりましたわ」一言呟く、
 でもまだやるべきことが残っている、私はそこへと向かう、
 
「ウゴァァァ」(下で激しい音が鳴ってるわ、何かあったのかしら)
 アクアヴィーナスは激しい音に対して不審に思っていた、
 (誰が一体ここに攻めてきたのかしら)
 自慢ではないが自分が最後の人間の希望だったという自負はある、
 その私が居ないで誰が一体魔王を倒すことなど出来るだろう・・・?
 そう思っていたら自分が居た部屋の扉が開いた、
 そこには私が居た、正確には私の体に入ったモンスターが、
 しかも戦ってきたのか体は少し傷ついている
「ウゴァァァ」(何故貴方が)        
「どうせ聞き取れませんから喋らなくて結構ですわ」
「ウゴァァァ」(私みたいに喋らないで気持ち悪い)
「喋るなと申したでしょう」魔力を少しぶつける、部屋の端まで飛んでいく、
「全く醜いですわね、今の貴方は」
「・・・」押し黙るモンスター
「ええ、魔王は倒させていただきましたわ、ですけど今の私は一つ不安がありますわ、
 魔王が死んだことによって万が一ですけど肉体転移の法が解けてしまうかもしれませんわ、
 それがいつになるかは解りませんけど、
 だってそうでしょ、この美しく華麗で強い私がこんな芋虫に成り下がるだなんてごめんですわ」
「ウゴァァァ」(芋虫は貴方でしょう)
 モンスターが叫ぶが
「おだまりなさい」とまた魔法で吹き飛ばされる、
「だから不安材料は少ない方がいいでしょう、
 私の魔力を全部ぶつければ今の貴方などかけらも残さず消し去ることが出来ますから、
 消えていただけませんか」
 そう笑顔で話すアクアヴィーナス、
「ウゴァァァ」(じょ、冗談じゃ有りませんわ)
 そう叫ぼうとするが
「さて、じゃあ黙っていただきましょうか」
 そう言うや否や魔力を最大限に使い出した、
「ウゴァァァ」(嫌ぁぁぁぁ)
 影も残らずモンスターは消え去った・・・。
                   
 
  
   あとがき
   
   チャットで美の女神というお題を受け取り書いて見た作品、自身初ダークだったので抱きの
方はあまり自信は有りませんが・・・。石山さんの一万ヒットに寄贈させていただきます。